研究課題/領域番号 |
26301004
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
矢作 弘 龍谷大学, その他部局等, 教授 (40364020)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 縮小都市 / 人口減少 / ポスト工業化 / FIAT / トリノ / 産業構造の転換 / 都市再生 / EU |
研究実績の概要 |
縮小都市+ポスト工業化社会の意味解釈を試みることを目指した研究だった。本年度は、労働力の供給面からトリノの自動車産業の成長を支えたイタリア南部に注目し、バーリ工科大学なども訪問し、聞き取りを行った。また、対比するためにデトロイトについても調べた(『世界』岩波書店に論文を発表)。 また、トリノの現地調査を実施し、トリノ工科大学、トリノ大学の研究者と研究交流を実施した。来日したトリノ工科大学の研究者と日本の都市の「縮小」をめぐって意見交換をした。初年度から行ってきた調査研究の取りまとめ、残った課題の整理をした。また、以下の研究成果の発表に漕ぎ着けた。 1)前年度までに『地域開発』(日本地域開発センター)で投稿原稿を連載した。今年度は、それを基礎に、2)の出版につなげる作業に取り組むことにした。 2)『トリノの奇跡-「縮小都市」の産業構造転換と再生』(藤原書店 2017年2月)を刊行した。本書では、「イタリア第4の都市トリノ」がいかにして<フィアット城下町=One Company Town>からの脱却に成功したか、を明らかにすることに努めた。本研究グループは社会科学系、自然科学系の多分野から研究者を募って構成された。その結果、本書の内容も学際的なものになった。その意味での初期の目標を達成できたと考えている。 3)上記本の出版を踏まえ、トリノ工科大学で本研究の①ねらい、②成果を発表する研究会を開催した(同大学教授/名誉教授、院生、トリノ市副市長、Urban Centerスタッフなどが参加し、活発な意見交換の場になった)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)毎年度、その年度の研究成果を発表することができた(『龍谷政策学論集』『世界』=岩波書店、『地域開発』=日本地域開発センター)。 2)最終年度に単行本を発行することができた(『トリノの奇跡-「縮小都市」の産業構造転換と再生』(藤原書店 2017年2月))。 3)研究成果の発表を海外で実施できた(トリノ工科大学 2017年3月)。 4)研究の国際交流の輪を広げ、ネットワークの構築に成功した(研究者の招聘、新規の研究プロジェクトの立ち上げ)。 以上を評価し、当初期待したおおむねの研究成果を達成できている、と考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)本研究の経緯を振り返ると、デトロイト研究を通じて同じ自動車都市であるトリノの変容に注目し、トリノの調査に着手することになった。そのデトロイトが、最近、急速に変化してきている。アメリカ中西部都市の現況を追加調査し、トリノ研究をさらに深化させたい、と考えている。 2)昨年度、イタリア南部の聞き取りを実施したが、その成果/人的ネットワークを生かしたさらなるイタリア南部調査は、意義深い、と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費(航空便の手配、ホテルの選択、日当の支払い)の使用について常々、節約に努めた。その結果、次年度使用額が生じた。また、出張時期についてもFlight代金の高い繁忙期(8月の夏休み)を避けるなどの工夫をした。 研究に必要な書籍の入手については、それぞれのメンバーが別途の研究費から調達するなどし、当該研究費からの支払いを抑えた。また、研究を深化させるために、学内の研究助成制度に応募し、その併用によって本研究費を効率的に使うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
1)イタリア南部の使い調査、2)アメリカの産業都市の追加調査に充当したい。 出版『トリノの奇跡』の成果をさらに大きく展開する議論につなげる。
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