研究課題/領域番号 |
26301011
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩志 和一郎 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70193737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 児童虐待 / 児童保護 / 子の福祉の危険化 / 親権制限 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、2回のドイツ調査を実施した。第1回(7月)は、ベルリンのパンコウ家庭裁判所裁判官、手続補佐人、危機児童保護施設Nogatstr.7、ケルナーパーク街区整備事務所長、第2回(12月)は、テンペルホーフ=クロイツベルク家庭裁判所裁判官、ベルリン緊急児童保護サービス所長、ベルリン州警察虐待対応課課長、ベルリン大学附属病院暴力被害外来所長、ドイツ司法省参事官などに対して、聞き取り調査を実施した。バイエルン州レーゲンスブルク市での聴き取り調査も実施を計画していたが、ドイツ側研究協力者の急な都合により中止となり、来年度へ延期とした。 これら調査の結果は、平成26年度3月に実施した、ベルリンのシャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区、パンコウ区、リヒテンベルク区の少年局、シェーネベルク家庭裁判所、ベルリン上級地方裁判所の聴き取り調査の結果とともに、整理分析中であるが、その一部を報告論文としてまとめた(「家族<社会と法>」第32号(2016年8月刊行予定)に掲載予定)。 平成26年度、27年度の調査によって、第1に、裁判所の手続を喚起するまでの間、少年局による子の福祉の危険化の評価と保護がどのように行われてきているか、第2に、裁判所の手続が開始して行われる討議が実際上どのように運営され、児童保護の流れの中で裁判所がどのような位置づけを与えられているかという2点について、ほぼその実務の実態が判明してきた。なお不分明な部分については、28年度調査で詰めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度、27年度において合計4回のドイツ調査を実施し、ベルリンを中心としてという限定はあるが、児童保護行政(少年局)、司法(家庭裁判所)、その他の諸力(警察や民間団体)の児童虐待対応の実態を把握することができる段階にまで到達した。本研究と並行して行われてきたドイツ側の全ドイツ規模の調査がほぼ終了し、現在その結果の取りまとめ中である。平成28年度にはそのデータを参照することができるため、我々のベルリン調査に、全ドイツ規模の視点を加えることができると考える。 調査報告を最終的に報告するにあたり、ドイツの少年援助の制度全体をあわせて紹介する必要がある。そのため、ドイツ側研究協力者であるヨハネス・ミュンダー教授より、さおの最新の教科書「少年援助法」の翻訳の許可を得、現在翻訳が進行中である。また制度理解の前提となる法律規定についても、すでに私が中心となって翻訳した社会法典第8編の翻訳を、最新版に改訂中である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに上記の通り、26年度、27年度調査で得られた結果の整理は現在進行中である。これら調査によって、ベルリンという限られた窓からではあるが、ドイツの児童保護実務の実態が明らかとなってきた。今年度は、これら先行する調査の分析から、なお不分明な部分を明らかにするため、ベルリンで調査を実施する。とりわけ、児童保護ネットワークについてはそれを構成する機関も多様であり、その中心的なものについてあといくつか調査を行うとともに、ベルリン州政府に対しても聴き取りを実施する計画である。 またすでに述べたように、ベルリンと比較の意味で、昨年度実施予定であったバイエルン州レーゲンスブルクでの少年局および家庭裁判所の調査を、計画している。 最終年度であり、本研究について取りまとめを行うが、最終的には、本研究と並行してドイツで実施されている全ドイツ規模の調査が本年度中にまとまるので、両研究を総合する形で、年度末(現在平成29年3月を予定)に、ドイツ側研究協力者を招聘してシンポジウムを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に、もう1回、バイエルン州レーゲンスブルグでの調査の実施を計画していたが、ドイツ側研究協力者の都合で中止となり、次年度に延期としたため、未使用分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に延期となったレーゲンスブルグでの調査に使用することを予定するが、さらに平成29年3月に予定するシンポジウムの経費として一部振り分けることも予定している。
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