研究課題/領域番号 |
26301014
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
高橋 若菜 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (90360776)
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研究分担者 |
吉田 綾 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (10442691)
伊藤 俊介 東京電機大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50339082)
沼田 大輔 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (70451664)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際規範 / 衝突 / アジア / 循環型社会形成 / 欧州 |
研究実績の概要 |
本研究は、循環型社会形成分野を事例として、国際規範の受容や履行に多様性が生じる要因を探ることを目的としている。すなわち国際規範と他規範の衝突、階層性、調整、融合に着目し、実証研究と通時的分析を通じて、比較政治論的に要因を解明することを目指した。研究目的に則して①国際規範に関する理論研究、②循環型社会形成分野における国際規範と、関連の国際・国内政策の動向レビュー、③実証研究1(OECD諸国)、④実証研究2(非OECD諸国)、⑤比較考察、を研究項目の柱とした。 4年目である29年度は、スウェーデンや日本に加えて、2000年代に入ってから規範適用を行ったバルト海諸国にも足を伸ばし、現地視察や聞き取り調査を重ねた。とりわけデポジット制度については、1980年代に制度が導入されたスウェーデン、2016年に制度導入がはかられたリトアニア、一旦は検討を取りやめたものの、隣国エストニアやリトアニアの制度導入実績を横目に再度検討を始めたラトビア、の三か国について、社会的背景を含む詳細な聞き取り調査や現地調査を行い、制度の導入を左右する要因について検討した。 こうしたフィールド調査と並行して、2017年9月に開催された環境科学会年次大会では、「廃棄物・資源回収の国際比較」と題した企画シンポジウムを開催した。回収の有り様は循環型社会形成の要であり、拡大生産者責任などの国際規範とも関連していること、国際規範の適用は国によって異なること、背景に各国が志向する環境言説(行政的合理主義か、経済的合理主義か、エコロジー的近代化か)の差異が見られること、スウェーデンはリサイクル率が高く、デポジットや生産者団体自身による回収など、多様な回収の機会があるため、比較調査対象として適切であることを理由に、各自、スウェーデンを比較対象としながら全員報告を行った。さらに、それぞれに、論文投稿や著書執筆なども進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、①国際規範に関する理論研究、②循環型社会形成分野における国際規範と関連の国際・国内政策レビュー、③実証研究1(OECD諸国)、④実証研究2(非OECD諸国)、⑤比較考察、を研究項目の柱としている。平成29年度までに、ひととおり網羅することができた。 まず、理論的研究(①)や政策レビュー(②)では、経済的合理主義に基づく国際規範の受容に差異が見られることを確認した。そこで、なぜ国によって差異が生じるのかという問立てをし、都市ごみの廃棄物・資源回収プロセスにおける多様なアクターの相互関係に焦点をあてることにした。実証研究1(OECD諸国:③)では、欧州からは規範先進国のスウェーデン、アジアからは日本について、広範な調査を実施した。実証研究2(非OECD諸国:④)では、欧州ではバルト三か国を、アジアでは中国についても、各々現地調査や聞き取り調査を進めた。このうち、欧州の非OECD諸国調査については、分担者沼田の尽力で、平成29年8月に沼田、高橋、伊藤の渡航が叶い、ラトビアのリガやリトアニアのヴィリニュスで、聞き取りを含め幅広い現地調査を重ねることが出来た。 以上を踏まえて、平成29年9月には、環境科学会2017年会にて企画シンポジウムを開催し、全員が、廃棄物・資源回収について国際比較(⑤)を行った。具体的には、髙橋は「家庭ごみステーションの日瑞中比較~比較政治の観点から」、伊藤は「家庭ごみ分別の担い手としてみた住民の行動・意識の日瑞比較」、沼田は「ワンウェイペットボトルの店頭回収の日瑞比較」、吉田は「廃電子電気機器回収リサイクルの日瑞中比較」について報告を行った。さらに高橋は実証から理論へ回帰し、循環型社会形成における日本的特徴、すなわち行政的合理主義が強く経済的手法が敬遠される様相を明らかにした。 以上の経緯からして、本研究は概ね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度となる予定であり、上述の通り、研究項目をひととおり網羅することが出来た。ただし、この分野は、現在国際的にも規範の変化が観察されるところであり、とりわけ非OECD諸国においては、急激な政策変化も進行中である。なかでも、平成28年度に現地調査を行った中国の北京では、行政を通さないスカベンジャーや社区をベースとした収集システムが従前より存在していたが、これらが近年変質し、とりわけ、中国独自の店頭回収システムが近年大幅に拡大しつつあった。そのため、さらなる追加調査を予定していたが、なかなか日程調整がつかなかった。 そこで、1年の研究延長とはなるが、平成30年6月、中国の北京にて開催される国際学会、International Conference on Resource Sustainability (icRS 2018)とあわせて渡航し、さらなる追加調査を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、欧州調査とともに、中国における追加調査を予定していた。しかしながら、平成30年に北京で開催される国際学会にあわせて調査を行うことにしたため、未使用額が生じた。 これを受けて、本年は、6月に北京で開催される国際学会、International Conference on Resource Sustainability (icRS 2018) への参加費と現地調査、また研究打合せのための旅費も計上した。このほかに、研究全般を支える研究支援員のための人件費を、謝金として計上した。
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