研究課題/領域番号 |
26301015
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
篠田 英朗 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60314712)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 平和構築 / オーナーシップ / パートナーシップ / 国連 / 法の支配 / シエラレオネ / スリランカ / 地域機構 |
研究実績の概要 |
平和構築における法の支配の制度化にあたっては、平和構築の現場となる国ごとの違いだけでなく、より大きな地域に応じた違いがあることが非常に重要であることが判明してきた。これは特に近年の大きな傾向であるが、武力紛争の発生の形態にも変化が生まれ、地域的な違いも顕著になってきたことが背景にある。異なる状況で異なる対応がなされるのは、異なるニーズがあるからである。法の支配という平和構築活動の鍵を握る活動を実施する場合においても、地域事情に応じた多様な実施方法がありうる。本研究では特にシエラレオネとスリランカの事例に着目し、アフリカ型とアジア型のモデルの構築を意識してきたが、より広い視点でシエラレオネとスリランカの事例を捉えていくことの必要性も判明してきた。中でも重要な含意を持っているのが、地域機構の介在である。シエラレオネのようなアフリカの平和構築の事例においては、アフリカ連合などの地域機構が、重要な役割を担い、地域的なオーナーシップの発展が議論されることになる。それに対して南アジアでは地域機構の活動がまだ制約的であり、基本的な介在に限界がある。地域機構の介在が少なければ当然に国家機構が担う機能が大きくなる。オーナーシップの発現は、ドナーと当該国との間の1対1の関係では計り知れないものがある。2015年は国連でいくつかの重要な報告書が公刊されたが、それらの中でも地域事情に応じたオーナーシップの発現について重要な議論がなされていることが判明した。そこでも強調されるのは、政治的な調整によるオーナーシップの発展の不可避性である。平成27年度はさらに情勢分析および理論的なモデルの構築に時間を要したが、法の支配の制度化は高度に政治的な作業を伴うため、従来の平和構築段階論モデルの枠組みをこえて、地域機構を取り込んだ政治的意思決定メカニズムの重層性の仕組みに着目していくモデルの必要性が高まってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は海外調査は米国ニューヨークにおける国連平和活動の動向調査にとどまった。その最大の理由はシエラレオネにおけるエボラ出血熱の終息の遅れであった。遂に2016年3月にシエラレオネのエボラ出血熱の終息宣言が出されたため、平成28年度に繰り越した渡航費用は研究機関全体の中では予定通り執行できそうである。なお米国のESTA方針の変更について対応をするために時間を要することが判明したため、方針変更時期に重なってしまったInternational Studies Associationにおける研究成果発表の機会を確保できなかったことは残念であった。これについては他の学会での報告機会の確保などで取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで個別的な部分の研究成果をいくつかの媒体に発表してきたが、最終年度にあたる平成28年度においては、研究全体の進展を鳥瞰することができる成果の発表をしていくことになる。海外調査の時期がずれこんだところもあるので、それらを遂行した上で、精緻化した理論モデルと重ね合わせて、平成28年度末に総合的な最終研究成果発表を論文の形態で行っていくことになる。あわせて学会での口頭報告の機会も複数持っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
シエラレオネへの調査出張をエボラ出血熱の影響で延期せざるをえなくなった。またInternational Studies Associationへの研究報告出張が、当該月における米国のESTA方針の変更によって中止を余儀なくされた。
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次年度使用額の使用計画 |
シエラレオネにおけるエボラ出血熱の終息宣言が2016年3月に発出されたことにより、平成28年度繰り越しで出張を遂行することができるようになった。平成28年度に海外学会での報告を複数回行う。
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