研究課題/領域番号 |
26301025
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
吉田 健太郎 立正大学, 経営学部, 准教授 (70513836)
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研究分担者 |
藤井 博義 立正大学, 経営学部, 准教授 (00514960)
高橋 俊一 立正大学, 経営学部, 講師 (00547896)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中小企業 / 国際経営 / 産業集積 / リバースイノベーション / 経営戦略 / 知識移転 / アジア / イタリア:イギリス:フランス |
研究実績の概要 |
【研究会】第1回研究会では、研究課題・研究計画・役割分担など科研申請書をもとに情報共有を行った。第2回は、各自の研究計画について議論し問題意識の摺合せと共有作業を行った(5月)。第3・4回は、国際学会発表報告と当該年度に実施する現地調査計画の報告を行った(7月)。第5・6回は、本研究のキーコンセプトとなる「リバース・イノベーション(RI)」概念整理とRIの限界点を議論した(1月)。第7・8回は、今後の研究解明にむけての課題を明らかにするともに、研究計画の改善を試みた(3月)。 【学会報告・論文掲載】研究分担者の高橋は、日本経営学会第88回全国大会において「日本中小企業の知識移転活動-在ベトナム拠点の事例から」と題した報告を実施した。同内報告内容の論文は同学会刊の『経営学論集第85集』に収録された。研究協力者の丹下は、ICSB(中小企業研究国際協議会)World Conference 2014にて研究報告を行うとともに、同報告内容の論文を『日本政策金融公庫論集第25号』(2014.11)(査読付)に寄稿した。 【国内外現地調査】研究代表の吉田および研究分担者の藤井・高橋は、Vietnam(2月)では金属・樹脂の精密部品切削加工の会社のKOM社、建設機材のレンタルを行う西尾レントオール社に聞き取り調査を行ったPhilippines(3月)ではIT系企業Cyber Tech社、Infinite Points社、ZEKU社、Gulliver Offshore Outsourcing社など数社に聞き取り調査を行った。藤井は新興国に参考になるであろうRI直接投資型の先行ケースとして、Londonに展開している日本出版貿易に聞き取り調査を行った(8月)。また、高橋はドイツ・フランスに展開する中小企業にヒアリング調査を実施した。国内ではジェトロ東京本部(5・2月)にて資料収集および聞き取り調査を行ったうえで、佐賀県の有田焼(深川製磁)を訪問し聞き取り調査を行った(3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2014年度に実施した研究会では、本研究のキーコンセプトとなる「リバース・イノベーション(RI)」について、先行研究となるゴビンダラジャン『リバース・イノベーション』(2012、ダイヤモンド社)をもとに概念整理と同著における研究の限界点を議論した。その限界点と各自実施してきた現地調査・文献調査などの研究活動を手かがりに、「RI」の再定義を行うことができた。 今年度実施した現地調査では、新興国では現状、われわれが理論仮説上考えていたような集積およびその集積内における分業構造の高度化現象による顕著なリバース・イノベーションは観察することはできなかった。すなわち、日系中小企業が進出国である新興国から何かを学びその学びを国内本社機能における生産性向上につなげていくといった現象も、またそうした考えや狙いも現地管理職にはなかった。一方で、集積内において形成された現地日系企業のコミュニティは市場支配力に基づく従属的関係(垂直的関係)に限らず、日頃のご近所付き合いから生まれる社会関係資本に基づく人的関係(水平的関係)を生み出し、そのネットワークが生み出す関係性は現地における販路開拓のみならず国内にフィードバックされ国内の販路開拓にもつながっていく事実を発見することができた。 このように、アジアへ展開している日系の中小企業では、ベトナム、フィリピンという国の特性・成長ステージにより、進出の目的、展開方法が異なることが見えてきたが、従来の定義で示されるリバース・イノベーションの枠組みで一般化できる要素を発見するには至っていない。一方で、先進国のケースを踏まえた上で再検討するなど来年度へ向けての課題が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度までの研究会における議論と国内外での現地調査および文献調査によって、先進国・新興国・途上国・国内問わずこれまでの調査から、輸出型と直接投資型では、リバース・イノベーションが起こる仕組みも時間軸も大きく異なることが分かった。特に海外現地調査から得られる「気づき」と「知見」は今後の研究に大きな影響を与えた。具体的には各産業・業種ごとの一般化をケースから定性的に明らかにしていくことが時間制約上の限界があることも実感した。むしろ、業種横断的に、「成功」とみなされる(海外展開することで国内本社の生産性向上につながっている。あるいはつなげようとしている。つながる予兆があるなど)日系中小企業のケースを粒さに考察し、共通項をあぶりだす作業が先決であること。先進国の「成功」事例から学ぶべき点と新興国の課題とを照らし合わせる作業が必要であること。輸出型と直接投資型と分けて成功事例を分析すること、が今後本研究を精緻化するうえで必要かつ重要であることが明らかになった。 今後はこれらの課題と改善策を踏まえ、さらに研究を深化させていく所存である。このように2014年度は今後の研究解明にむけての課題を明らかにするともに、それに伴う研究計画の改善を試みることとなった。 最後に、3月にはポーランドおよびフランスにて調査を実施しているが、これらの調査を実施したのは年度末だったため、その成果は次年度前半期中にまとめ、学会等で報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度予定していた現地調査が、吉田健太郎(研究代表)が交通事故の被害に遭い(100%被害者)、実施できなかったことよる。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に実施できなかった海外現地調査を行う。
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