研究課題/領域番号 |
26301025
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
吉田 健太郎 立正大学, 経営学部, 准教授 (70513836)
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研究分担者 |
藤井 博義 立正大学, 経営学部, 准教授 (00514960)
高橋 俊一 立正大学, 経営学部, 准教授 (00547896)
中山 健 横浜市立大学, 総合科学部, 教授 (50248829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中小企業 / 国際経営 / 産業集積 / リバースイノベーション / オープンイノベーション / 知識移転 / 組織学習 / 経営戦略 |
研究実績の概要 |
本研究は、今年度2年目にあたる。本年度の研究実績としては、昨年度に引き続き、研究会による情報共有と分析の共同作業等を行うとともに、国内・海外における現地調査、学会活動への参加および口頭発表、学術誌への論文発表等を行った。また今年度は、新たにアンケート調査を実施した。 具体的には、研究会については8回開催した。研究会の議題としては、各研究分担者の研究計画の進捗状況の確認、定義や分析の枠組みのすり合わせと共有、仮説の構築、それぞれの調査結果の分析と共有、外部講師の講演などを行った。定期的に、顔を合わせ丁寧に議論を重ねることで、問題意識の共有と研究の方向性を確認できた。研究会の成果としては、専門性の異なる研究者が集う研究会ではあるが、丹念にすり合わせを行うことで統一感のある研究計画に改善することもできた。同時に研究会全体で仮説の構築したことで、今後研究を推進するうえで、共通する分析の枠組みができた。 海外現地調査は、タイ王国(バンコク)、台湾(台北)、イタリア(ミラノ)の3カ国を訪問した。国内現地調査は、佐賀県(有田)、山梨県(甲府)、鹿児島県(鹿児島市)の3県を訪問。タイでは9社、台湾では2社、イタリアでは3社企業訪問および聞き取り調査を実施。佐賀では3社、山梨では2社、鹿児島では1社企業訪問および聞き取り調査を実施した。 学会活動は、日本中小企業学会全国大会(福岡)および日本ベンチャー学会全国大会(小樽)、異文化経営学会研究大会(東京)に参加した。日本中小企業学会全国大会では、口頭発表を行った。学術誌への論文発表は、海外ジャーナル1本、国内学術誌2本に掲載を行った。 アンケート調査は、「海外市場向け製品を製造する中小企業においてリバースイノベーションがどのように実施されているのか」を明らかにするための調査を国内にて実施した。分析結果は次年度論文としてまとめる予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、昨年度において「海外展開のパターンと業種を絞り込み一般化する必要がある」ことが課題として浮き彫りになったことを受け、今年度は業種は「ものづくり」を中心とする製造業、飲食を中心とするサービス業に対象に、直接投資を行う中小企業に絞り調査を行った。さらに、1社1社の聞き取り調査をより丁寧に複数回行うことで、定性的に各企業の成功の要因と課題を明確にすることを心がけた。その結果、イノベーションを生み出す要因とそれを阻害する課題などの共通項を発見することができた。そこから、本研究全体における仮説を導き出すことができた。 具体的には、「海外の産業集積(含む都市)から国内で不足する外部資源を補い国内で得られた(模倣しにくい)強みと海外の産業集積から得られる外部経済を掛け合わせることで、差別化されたイノベーションを興していく日本的リバースイノベーション(逆流経営戦略)が今後の中小企業の海外展開(直接投資型)の有効な戦略になるのではないか」との仮説を導いた。また、「製造業においてより模倣されにくい強みを生み出すためには、国内集積におけるオープンイノベーションによって得られる地域資源の活用、すなわち集積内コラボが有効である」ことを明らかにした。サービス業においては、来年度以降、この点について明らかにしていく。 次に、昨年度に残された課題として、アジアの新興国では、現状リバースイノベーション(RI)を興こす段階に至っている企業がほとんど見当たらなかった。そこで、リバースイノベーションを興すまでを段階的に細分化し、新興国ではどの段階までそれが進んでいるのか、またその次のステップに進めないのはなぜか、という視点を加えて調査を行った。加えて、先進国(イタリア)に直接投資した日系中小企業で既にRIを興すことに成功した企業の成功事例を粒さに分析し、深刻国へのヒントを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記したとおり、おおむね順調に研究は進展しているが、課題も浮き彫りになった。これまで産業集積の活用を切り口として、いかにして経営資源の少ない中小企業がイノベーションを興していくのか、との問題意識のもと、いくつかのケーススタディにおける検証作業を通じて、グローバル時代の中小企業の経営戦略の一つの可能性を仮説として提示することを試みてきたが、数少ないケースからいえることには限界がある。一般化するには、今後、より多くのケースを積み重ね検証するさらなる作業が不可欠となる。また、産業集積のタイプや海外集積のエリア、業種、さらには、海外展開の方法によっても事情は異なるはずである。翻って、業種横断的な共通点や差異もあるはずである。こうした残された課題を明らかにしていくことが、今後の研究の推進方針における問題意識である。 こうした点を克服し、より研究を深化させるためにも、引き続き国内および海外における現地調査を実施する。現地調査で得られた情報やデータを研究会で共有し、統一的かつ学際性の高い研究成果をあげることに努めたい。また、アンケート調査の分析結果と現地調査で得られる定性的なデータとを照らし合わせ、地に足のついた実態に即した戦略の提言を試みたい。 なお、現時点において本研究課題は、研究期間の折り返し地点を迎えた。最終年度である次年度には商業出版を予定している。本としての商業出版に先立ち、各分担者全員が研究成果を学術論文や学会発表などで社会にその成果を示し客観的な反応を得られることを目指したい。現時点において成果を未発表の分担者については、今年度中に発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していたヒアリング調査において、先方とのアポイントの調整がうまくいかず、実施できなかった調査ががあったため、次年度へ予算を繰越すこととした。平成28年度に改めて調整のうえ、ヒアリング調査を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度、一部先方とのヒアリング日程の調整がつかず実施できなかったヒアリング調査について、平成28年度に改めて調整の上、実施する予定である。
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