研究課題/領域番号 |
26301029
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
青木 秀男 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (50079266)
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研究分担者 |
小ヶ谷 千穂 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00401688)
石岡 丈昇 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10515472)
吉田 舞 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (50601902)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グローバル都市 / 都市底辺層 / スクオッター居住者 / 貧困女性 / ホームレス / 先住民 |
研究実績の概要 |
本研究は4つの課題を設定した。一つ、都市貧困者、出稼ぎ先住民、ホームレスの全体像を明確にすること。現在この課題の解明を行っている。具体的には、①スクオッター住民の世代交代と階層化、スクオッターの(強制)撤去の進行、スクオッターの地価の高い都心部から安い周辺部へのドーナツ化。こうしたスクオッターの変容をの解明している。②先住民の出稼ぎの実態の解明を行っている。とくにアエタとバジャウに絞り、人々がいつ、マニラのどこへ入り、どんな仕事に就き、いつ帰郷するかを明らかにしている。③ホームレスの実態を解明している。ホームレスは、どこから来て、どこにいて、どんな形で(単身か家族連れか)、どんな仕事をしているか。二つ、都市底辺の労働の解明を行っている。仕事の中心は都市のインフォーマル職種である。物売り、荷運びや車の監視、物乞い、「不法」の仕事(窃盗、売春、薬物)。対象とする人々の雑業の実態解明を通して、インフォーマル・セクター論の議論を進めている。三つ、都市底辺の生活の解明、とくに貧困の諸相を分析している。人々は、仕事から得る収入により生活をどう凌いでいるか。貧困の相貌は、都市貧困者、先住民、ホームレスにより異なる。また単身か家族連れか、相互扶助の資源の有無等の条件により異なる。四つ、都市底辺の人々の境遇や運命に対する意味の分析を行っている。人々は自らの境遇をどう認識し、どんな人間関係を作り、どんな未来を予測しているか。・・本研究は、これらの課題をマニラの文脈を踏まえ、調査フィールドの実態に即して解明している。その過程で、理論更新のための議論を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年目に入る。初年度に設けた課題の解明のためのマニラ調査を、研究代表者及び分担者それぞれの課題に沿って進めている。また2015年1~2月には、マニラからスクオッター問題の研究者及び貧困女性問題のフィールドワーカーを招へいし、東京で国際シンポジウムを行ったほか、札幌、横浜、静岡、広島において本研究の課題をめぐる研究会を重ねて、本研究の課題解明のために大きな成果を挙げた。研究代表者及び分担者それぞれのマニラ調査は、太田麻希子さんという強力な研究協力者を迎え、また現地での専門家及び調査協力者の協力を得て、ほぼ順調に進み、予定の成果を挙げている。それにより、「実績の概要」で示した本研究の課題の解明は、ほぼ予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年は本研究の最後の年であり、マニラ調査及び仮説形成とその検証の最終段階に入る。 研究代表者及び分担者は、それぞれの計画・日程に基づき、マニラ調査を続行し、2015年度調査の結果をチェックし、補充する。そして本研究チーム全体の予定として、まず2016年11月に、マニラのアテネオ大学で、フィリピンの都市貧困研究者及びフィールドワーカー・学生・市民を集めて、国際シンポジウムのかたちで、本研究の成果を公開し、議論を行う。そして、研究成果の達成度を確認し、またフィリピンでの人々に対して問題提起を行う。次に、本研究の成果をまとめ、本として出版する準備に入る。本の出版は、研究成果の報告書として、また成果を広く世に問うものとしてある。本年度中に出版にまで行くのは時間的にむずかしいと思われるが、本の構想と執筆分担の決定と原稿執筆の開始にまで進む予定である。そして、本研究の終了(2017年3月)に引き続き、本研究の最終仕上げとして本の刊行を行いたい。
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