研究課題/領域番号 |
26301033
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
柴山 真琴 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40350566)
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研究分担者 |
高橋 登 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00188038)
池上 摩希子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (80409721)
ビアルケ 千咲 東京経済大学, 経営学部, 特任講師 (70407188)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイリテラシー / 独日国際児 / 同時バイリンガル / 質的研究 / 継承語としての日本語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドイツ居住の独日国際家族を対象に、幼児期・児童期のバイリテラシー形成過程の更なる解明を進めることである。具体的な課題は、以下の通り。【課題1】独日国際家族における多様なバイリテラシー実践に通底する基本原理を抽出すること。【課題2】継承語としての日本語リテラシー形成過程の特徴を解明すること。
上記課題を明らかにするために、4年目である平成29年度は、(A)と(B)の調査・研究を行った。 (A)【課題1】に関わる調査・研究:[調査1]日誌法による対象児の行動観察調査、[調査2]対象児の通学校(現地校と日本語補習授業校(以下、補習校))等でのフィールド調査、[調査3]対象児の二言語力(ドイツ語力と日本語力)調査の4年次調査を行った。各調査で得られたデータについては、調査ごとに年度末までに大方のデータ整理を行った。 (B)【課題2】に関わる調査・研究:前年度の作業を踏まえて、本年度は2つの作業を行った。(1)児童期の作文力を総合的に評価するための指標である「作文評価法」の精緻化:平成26年度に開発に着手した「作文評価法」(①文字・表記・単語レベル、②構文レベル、③談話レベル、の3次元から構成)のうち、「談話レベル」の評価指標となる「ルーブリック」の改訂作業を続け、3種類のルーブリック(小学校低学年用・中学年用・高学年用)をかなり完成に近づけることができた。(2)国際児の日本語作文データの収集と分析:平成28年度に実施した補習校小学部6年生(ほとんどが国際児)の日本語作文の分析結果を調査報告としてまとめ、口頭説明を加えながら補習校側にフィードバックした。さらに、補習校小学部4年時の作文と同6年時の作文を縦断的に分析することを通して、日本語を継承語として習得しつつある児童の作文力の発達過程に見られる特徴を検討した。この結果を学術調査報告としてまとめ、公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した2つの調査・研究と対応させると以下の通りである。 (A)【課題1】に関わる調査・研究:当初の計画通り、[調査1]から「調査3」までの3つの調査の4年次調査を行うことができた。 (B)【課題2】に関わる調査・研究:(1)「作文評価法」の精緻化、(2)国際児の日本語作文データの収集と分析、を課題として設定した。(1)については、「談話レベル」の分析指標である「ルーブリック」の改訂は予想以上に難しい課題も多く、改訂作業に時間がかかったが、年度末までに3種類の「ルーブリック」の最終版を作成することができた。(2)については、補習校小学部6年生を対象に実施した作文調査で得た作文を、上述の「作文評価法」を用いて分析し、調査報告としてまとめ、補習校にフィードバックした。さらにこの調査報告を学術調査報告として改稿した上で、学術誌に投稿し掲載された。 以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(A)【課題1】に関わる調査・研究:次年度(平成30年度)は、以下の2点を中心に進めていく予定である。(1)縦断的データの収集:[調査1]日誌法による対象児の行動観察調査(5年次調査)、[調査2]対象児の通学校(現地校と補習校)でのフィールド調査(5年次調査)、[調査3]対象児の二言語力(ドイツ語力と日本語力)調査(5年次調査)。年度末までに調査ごとにデータ整理を行う。 (2)調査データの分析:特に次の3点に焦点を当てたデータ分析を行い、論文としてまとめる。①対象児の二言語での宿題遂行過程の分析、②対象児の二言語での読書過程の分析、③対象児の日本語作文力の発達過程の分析。これらの分析を通して、バイリテラシー実践に見られる家族間協働の多様性を開示すると共に、その多様性に通底する基本原理の探究を試みる。
(B)【課題2】に関わる調査・研究:次年度は、以下の2点を中心に進めていく予定である。(1)日本語作文力の指標の完成:1年次(平成26年度)から取り組んできた、児童期の作文力を総合的に評価するための「作文評価法」を完成させる。その上で、本研究で開発した「作文評価法」を①「作文評価法」の全体構成と②「ルーブリック」(談話レベルの評価指標)に分けて、論文の形で公開する。 (2)国際児の日本語作文データの収集と分析:次年度は、これまで補習校小学部4年時と同6年時に作文を書いてもらった同じ生徒集団(平成30年度補習校中学部2年生)に、3回目の日本語作文調査(「物語文課題」作文と「説明文課題」作文の2課題)を行う。さらに(1)で述べた「作文評価法」を使って、作文データを分析する。特に日本語を継承語として習得してきた対象生徒の日本語作文力に見られる特徴(小学部6年時からの変化、日本語モノリンガル児の作文力の発達過程との重なりや違いなど)に焦点を当てて、縦断的分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)次年度使用額が生じた理由:昨年度(平成28年度)、研究分担者の海外調査のために海外旅費他(37万円)を用意したが、年度当初には予想されなかった術後の体調不良により海外調査に参加することができず、37万円が未使用となった。本年度は、昨年度の未使用分を海外旅費に充当することができたため、本年度の旅費を次年度(平成30年度)に回すことができた。また、ドイツ語データを日本語資料として保存する際に、専門業者に音声の文字起こしと日本語翻訳を同時発注したり計画的に発注したりすることで割引をしてもらうことができたことから、約32万円を節約することができた。 (2)使用計画:海外旅費は、次年度に実施予定の海外調査の旅費として使用する予定である。分析謝金は、次年度に予定している調査データの保存に関わる経費(音声データの文字起こし代及び翻訳代など)として使用する予定である。
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