研究課題/領域番号 |
26301036
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉永 契一郎 東京農工大学, 大学教育センター, 准教授 (70313492)
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研究分担者 |
夏目 達也 名古屋大学, 高等教育研究センター, 教授 (10281859)
中島 英博 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20345862)
中井 俊樹 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (30303598)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高等教育 / 大学院 / アジア / アメリカ / グローバル化 / 人材育成 / 工学 / ビジネス |
研究実績の概要 |
初年度は、インド、マレーシア、香港、タイ、中国、アメリカの大学院において、調査を行った。調査が主に3月に実施され、まだ、全体の整理が行われていないため、報告者が実施した部分について記述する。 インド調査:インド工科大学(デリー校)、デリー大学、インド科学大学、インド経営大学(バンガロール校)、インド情報大学(バンガロール) インドの大学は、教育が英語で行われ、カリキュラムは欧米の大学と同等、教員の多くが、海外で博士号を取得している。そのため、グローバル化のために、特別な努力をしていない。インドの大学が抱える問題点は、世界的な研究大学が育っていないことである。大学入試を通じて、優秀な学生は集まっているが、研究力が高くない。学部卒業生は、奨学金を得て欧米の大学院へ進学(上位10%程度)するが、経済的理由から、大学院進学よりも就職を優先する学生も多い。多くのインド人にとって、アメリカのビジネス・スクールは、魅力的であるが、私費留学する経済力はない。そのため、インド経営大学が受け皿となっている。 アメリカ調査:カリフォルニア工科大学(カルテック)・カリフォルニア大学バークレー校 いずれの工学大学院も、学生の経費負担はなく、世界中から優秀な人材を集めている。特に、中国人とインド人からの留学生が圧倒的である。工学大学院の学生については、ポスドクと同様、教員の研究パートナーとしての役割が大きい。バークレーのビジネス・スクールは、6万ドルという高い授業料を徴収するが、就職支援と卒業生ネットワークが売り物で、アジアの裕福な学生を多く集めている。これらのことから、アメリカの大学院は、依然として、アジアの優秀な人材を依然として引き付けていることがわかる。ただし、工学とビジネスでは、対象とする学生やその活用法(一方は、研究パートナー、もう一方は収益源)が全く異なる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、留学生を送り出すインドの大学・学部卒業生の実情とアメリカ大学院の留学生受け入れスキームについて手掛かりを得ることができた。アメリカの工学大学院では、奨学金を提供することによって、優秀な大学院生を獲得し、研究活動を活性化している。また、アメリカの事情に通じた研究者を世界中に送り出すことによって、国際的な研究ネットワークの拠点となっている。アメリカのビジネス・スクールは、就職支援やビジネス・ネットワークを売り物に、アメリカ人学生と同様、留学生からも多額の授業料を徴収する収益事業を行っている。特に、アジア地域は、今後も経済成長が見込まれる地域であり、卒業生を通じたビジネス・ネットワークの存在が、教育上も経済上もビジネス・スクールにとっても極めて貴重な財産である。したがって、同じ高等教育であっても、工学とビジネスでは、大学院運営モデルは全く異なる。インド以外のアジア諸国の調査が3月に行われたために、それらの国の調査報告がまだ整理されていない。今後、他の調査国についてのまとめが完成した時点で、インドとの比較・検討を行う予定である。 初年度は、また、アメリカにおける先行調査によって、調査対象の選定や依頼方法についての知見を集めることができた。アメリカの大学院調査について言えることは、大学が在学生のデータ公開に対して非常に慎重であることである。そのため、各大学個別のデータを入手することは難しく、一般的な説明を学協会において入手可能なデータによって検証する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究会を開催し、初年度のインド、マレーシア、香港、タイ、中国調査を総括する予定である。そして、グローバル化対応、研究大学の育成、大学院生の送り出し・受け入れ状況、地域における大学院の役割を明らかにする。 その上で、工学・ビジネス分野におけるアメリカ(東海岸・中西部・南部)・カナダ・オーストラリアの大学院調査を継続し、それぞれの海外「人材活用」のモデルを確定する。特に、カナダ・オーストラリアの大学院は、研究レベルもビジネス環境においてもアメリカとは異なり、アジアからの移民国家としての特徴もある。それらを考慮した上で、アメリカとは異なる大学院運営モデルを見出す。 本年度の終わりに、中間報告として、成果報告書を刊行する予定である。それによって、得られた知見を整理するとともに、3年目以降の課題を明らかにした上で、大学院生の移動に関するモデル理論を開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が1名、3月末で大学を移動したために、同じ部署に所属する他の2名も含めて、3月に予定していた海外調査ができなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度の3月に予定していた海外調査を夏季に実施する予定である。
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