研究課題/領域番号 |
26301044
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
秋田 美代 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80359918)
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研究分担者 |
齋藤 昇 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (60221256)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際教育協力 / 自律的な教育改善 / 算数・数学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現在の国際教育協力の方策を検証し、開発途上国の自律的な教育改善力の向上における課題を明らかにするとともに、自律的教育改善を推進する効果的・効率的教育協力方略を構築することである。 平成26年度は、ラオス人民民主共和国における過去の国際教育協力に関わる調査・分析を行った。ラオス人民民主共和国で行った調査データを基に、教育協力の内容を分類した結果、次のことが判明した。ラオス人民民主共和国の教育関係者は、国際教育協力を通して、「生徒中心の授業の展開方法」、「年間指導計画や学習指導案の作成方法」、「教材・教具の作成方法」等についての知識・技能を高めており、過去の国際教育協力はラオス人民民主共和国の算数・数学教育の質の向上に対して一定の成果を上げていると判断できる。しかし、研修の際に身に付けたことはそのまま利用できても、そこで身に付けた知識・技能を他の単元に応用する力は不足している。支援期間中は、支援国と共同で教育改善を進めているが、支援期間後に自律的に研修内容をさらに広げたり・深めたりすることはできていない。多くの国際教育協力がなされいるが,それらの関連は強いとはいえず、非支援国であるラオス人民民主共和国が多くの国際教育協力を自国の教育の質の改善に有効に活用することができているとはいえない状況である。 先進国の提供する教育改善のための個々の「知」を統合することについて意識していないこと、個々の国際教育協力によって獲得した知識・技能を他の単元等に応用するためのの専門性をどのように高めるかについての構想を持っていないこと等が開発途上国の自律的な教育改善における課題であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、過去の国際教育協力に関わった関係機関・関係者、支援の対象者等に対する追跡調査を行い教育協力の波及効果を明らかにすることを目指した。 年度当初、①日本において,インタビューのための質問紙を作成すること、②教育省に本研究に係る協力依頼・具体的実施内容についての 説明し、調査日程・場所、調査チーム等を含めた詳細な計画を立てること、③過去のラオス人民民主共和国での教育協力に関わった途上国側の関係機関・関係者、支援の対象者に対する追跡調査を行うこと、④ラオス人民共和国で行った調査データを基に、各教育協力の内容を分類し、分類された内容ごとの支援期間中・支援期間後の普及の状況と途上国の関係者の専門性やオーナーシップとの関係等を分析し、教育協力の波及効果を明らかにすることを計画した。 概ね計画通り実施できており、研究期間の3年間で研究目的は達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、教員養成機関がこれまでの教育協力あるいは教育の質の改善にどのような役割を担ってきたか調査し、自律的な教育改善との関係を明らかにする。研究計画の詳細は次の通りである。①ラオス人民民主共和国の教員養成機関である教育省教員教育局、国立教育科学研究所、及び教員養成大学を対象にして、これまでの教育協力あるいは教育の質の改善にどのような役割を担ってきたか調査を行う。②ラオス人民民主共和国で行った調査データを基に、各教育協力の内容を分類し、自律的な教育改善における途上国の教員教育機関の専門性とオーナーシップの関係を明らかにする。 平成28年度は、平成26年度、平成27年度の調査で明らかになった当該国の教員教育機関の教育の質の向上に資する専門性とオーナーシップの関係を基に、途上国の自律的な教育改善における課題を明らかにし、開発途上国が自国の教育改善ができるようにするためのシステムを構築する。研究計画の詳細は次の通りである。①平成26年度・27年度の調査結果をもとに途上国の自律的な教育改善における課題を明らかにする。②途上国が教育課題に合わせて適切に自国の教育改善ができるようにするためのシステムを構築する。③ラオス教育省・教員教育機関とシステムの活用についての検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、研究計画の段階では予定をしていなかった、ラオス教育省教員教育局副局長の本学への訪問やラオス教育科学研究所自然科学部副部長の本学における1年間の研修があり、研究代表者・分担者がラオス人民民主共和国の過去の国際教育協力の支援国・支援内容等についての情報を、日本国内で収集できる機会を得ることができ、旅費、人件費・謝金を大幅に節約できた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、平成27年度に予定しているラオス人民民主共和国における、過去の教育協力に関わった途上国の関係機関・関係者、支援の対象者に対する追跡調査の対象を拡大するために使用する。具体的には、対象を拡大することによって派生する、調査研究のための旅費、ラオス人民民主共和国国内での車両借上、通信連絡、調査会場借上のための予算として使用する予定である。
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