本研究の目的は、現在の国際教育協力の方策を検証し、開発途上国の自律的な教育改善力の向上における課題を明らかにするとともに、自律的教育改善を推進する効果的・効率的教育協力方略を構築することである。 平成28年度は、平成27年度に明らかになった、開発途上国の自律的な教育改善を阻害している要因を基に、開発途上国が教育課題に合わせて適切に自国の教育改善ができるようにするための、システムの構築を行った。 国際教育協力に関わる教育機関の関係者の調査から、教育関係者が自国の課題を認識していても、教科に関する専門性の不足により、学習内容・指導内容をどのように改善して教育の質を高めるかを考案できないことがあることが判明した。自律的な教育改善を進めるために、数学・数学教育の専門性を高めることが課題であることが明らかになった。このことから、発展途上国の数学教育に関わる人材が、数学科の特性に沿った指導・学習を行うための数学固有の知識観を認識すること、生徒に数学固有の知識観を身に付けさせる指導方法を理解すること、授業改善のための効果的な仕組みを持つことが必要であることが分かった。そこで、数学固有の知識観を基にしたモデルと授業改善の流れを提案し、これらを利用して、教員の質の向上を図ることを、ラオス教育省に提案した。提案した、数学固有の知識観を基にしたモデルと授業改善の流れについては、2017年度に、ラオス人民民主共和国の8校ある教員養成学校のどこかで大学教員・学生への講義を行うことを、ラオス教育省とともに検討した。
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