研究課題
平成27年度、28年度に実施した計7回の海洋観測結果から明らかとなった北部タイランド湾の貧酸素水塊の形成とその移動要因を解明するため、物理-低次生態系結合モデルを開発し調べた。また、長期増加傾向を示している河川流量の変化が北部タイランド湾の海洋循環や貧酸素水塊形成に与える影響を評価するため、物理モデルを使い当湾の海洋循環の物理メカニズムの解明を試みた。物理-低次生態系結合モデルは、観測期間の物理場と低次生態系の再現を目的とし、日平均風、月平均河川流量、海面熱フラックスを与え物理場を再現すると同時に、7回の海洋観測時に得られた河川の栄養塩濃度を境界条件として与え生態系の再現を行った。本モデルは観測された表層塩分の分布やクロロフィル濃度分布、底層の溶存酸素分布をある程度再現することができた。また、モデル中の底層での酸素消費速度は、現場観測されたものと同程度であった。モデル結果を解析したところ、貧酸素となる海域が湾北東部から湾北西部に季節とともに移動する原因は、河川水の分布の変化に伴う成層強度の変化によるものではなく、底層での酸素消費速度が大きくなる海域が季節とともに湾北東部から湾北西部へと変わるためであることが明かとなった。河川流量変化に伴う海洋循環場の変化については、低緯度と中緯度での河川水の挙動という視点からモデル解析を行った。低緯度では偏向力が小さいため河川水は中緯度に比べ慣性流に近い流れとなり湾の広範囲に広がることが分かった。また、河川流量を増加させても全体的な海洋循環パターンに大きな変化はなく、湾内の成層強度にも大きな変化は現れなかった。このことから、河川流量増加により湾内の貧酸素海域は増加しないと考えられる。ただし、河川流量増加に伴い栄養塩負荷量が増加するため河口近くでは貧酸素化の悪化が懸念される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Continental Shelf Research
巻: 118 ページ: 100-110
10.1016/j.csr.2016.02.016