研究課題/領域番号 |
26302002
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
近藤 美由紀 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (30467211)
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研究分担者 |
米村 正一郎 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 上席研究員 (20354128)
大塚 俊之 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (90272351)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 極地 / 気候変動 / 凍土融解 / 物質循環 / 放射性炭素 |
研究実績の概要 |
北極高緯度地域における永久凍土融解の進行は温室効果ガスの放出を増加させ、温暖化に対して高い正のフィードバック効果を与えることが強く懸念されている。しかしながら、長期間にわたる観測データが極めて少なく、現在予想されているフィードバック効果の不確実正は高い。本研究では、北米アラスカにて、凍土環境が人為的に攪乱されたことで長期間疑似的な温暖化環境に曝されてきた永久凍土モニタリングサイトを利用して、中・長期的な温暖化の下での土壌炭素動態ならびに炭素収支の変化に関する実測データを取得し、温暖化に対するフィードバック効果がどの程度なのか、解を得ることを目指す。研究二年目にあたる本年度は、9月初旬~中旬に北米アラスカに滞在し、毎木調査を実施するすると共に、前年度採取した凍土試料の化学分析、土壌培養実験を実施した。主な成果は、下記の通りである。
アラスカ州の長期温暖化実験サイトである北方林において、融解程度の異なる3つの処理区にコドラートをはり、毎木調査を実施した。より凍土融解が進んでいる処理区は、針葉樹が優占する他の2つの処理区に対して、広葉樹が優占し、単位面積当たりの樹木の出現頻度も高かった。 また、活動層にあたる深度の土壌試料を用いた室内での培養実験から、融解が最も進んでいる処理区の土壌は、-5℃からCO2の放出が確認され、0℃から15℃の間のCO2放出量は他の処理区よりも高い値を示した。培養に用いた試料は、バルク土壌での炭素含有率に明確な差は無く、14C分析から得られる見かけの生成年代はCO2放出速度が高い融解が最も進んでいる処理区の土壌のほうが古い年代であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地観測が予定通り進み、前年度に構築した土壌培養システムを使った永久凍土の室内培養実験も実施出来たため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
採取した凍土コア試料の分析、室内での凍土培養実験を継続して進め、凍土融解後の土壌炭素蓄積量の変化を推定する。また、平成27年度に行った毎木調査の結果を解析し、現存する樹木の生産量を概算し、凍土融解に伴う植物生産量の変化を検討する。これらの結果から植物、土壌双方の温暖化影響を総合的に解析し、中・長期的な温暖化に対して、土壌有機物の分解の活性化がどの程度のフィードバック効果をもたらしうるのか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度得られた結果から、野外観測の実施時期を変更し、翌年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
現地での観測や、土壌の化学分析、土壌培養実験に必要とされる機材の購入に充てる。
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