研究課題/領域番号 |
26302004
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
臼井 洋一 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 研究員 (20609862)
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研究分担者 |
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (70359206)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 古地磁気学 / 太古代 / 結晶方位 / 離溶磁鉄鉱 / ジルコン / 花崗岩 / ピルバラ / 古地磁気強度 |
研究実績の概要 |
平成26年度は野外調査・試料採取を行うとともに、採取した試料を用いて顕微鏡観察、基礎的な古地磁気実験、ジルコンの分離とEBSDによる磁鉄鉱の結晶方位の測定方法の確立を行った。野外調査では、オーストラリアピルバラ地域にて3週間の調査を行い、花崗岩と珪長質火山岩を中心に80以上のサイトで試料を採取した。採取した試料の顕微鏡観察より、花崗岩試料が古地磁気測定に適した離溶磁鉄鉱を含むことと、十分な量のジルコンを含むことが確認できた。研究目的を達成するために適した試料が得られている。 バルクでの段階熱消磁、段階交流消磁実験を全サイトについて行った。花崗岩試料を含む何割かの試料が落雷の影響を受けていることがわかったが、その他の試料からは良好な古地磁気ベクトルが分離できている。今後、磁化方位と地質構造を解析することで、古地磁気ベクトルの年代を制約することができる。また本年度の分析結果は来年度以降の試料採取の計画をたてる上でも重要である。EBSD分析では、磁鉄鉱の粒径が予想よりもやや小さく当初は分析が困難であった。この問題に対し、研磨時間を最適化するとともに、分析をマッピングモードで行うという工夫を行い、ごく細粒な離溶磁鉄鉱の結晶方位が計測可能となった。 以上に加え、既に所有していたピルバラ地域の花崗岩を用い、離溶磁鉄鉱を用いた古地磁気強度推定の手法を検討した。主に磁気異方性の効果により古地磁気強度推定には大きなバイアスが加わるが、適切に統計処理を行うことで、真の古地磁気強度の不偏推定が得られることを数値計算により示し、実験により確認した。この結果は国際誌に発表した。確立した古地磁気強度推定方法を採取した花崗岩に適用することで、33億年前の古地磁気強度をこれまで以上に高精度に復元することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は野外調査と採取した試料に対する基礎的な分析を行い、珪酸塩鉱物中の離溶磁鉄鉱やジルコン結晶といった「鉱物タイムカプセル」の存在を確認し、分析を開始することが出来た。特にピルバラ地域の多数のサイトで古地磁気用の定方位試料を採取したことで、本年度の主な目的は順調に達成されたといえる。予察的なEBSD分析では離溶磁鉄鉱の結晶方位の系統的な記載と理解を目指したが、磁鉄鉱の粒径が予想よりもやや小さく当初は分析が困難であったが、既に調査地域の花崗岩中の磁鉄鉱を分析する手法を確立し、問題を解決している。さらに、既に所有していたピルバラ地域の花崗岩中の離溶磁鉄鉱について、離溶磁鉄鉱を用いた古地磁気強度推定の手法を検討し国際誌に発表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
試料の採取および基礎的な全岩測定が順調に進んでいるので、今後は微小試料を対象にした高度な分析を進める。斜長石や石英の単結晶を用い、SQUID磁力計による定方位磁気測定を行い、古地磁気方位・古地磁気強度を求める。EBSD実験を進め、磁鉄鉱の形成条件を決定する。またジルコン結晶を用い、U-Pb年代決定とメルト包有物の化学分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者と都合が合わず、本年度の調査は研究代表者と研究協力者で行ったため、一人分の旅費が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の試料採取の不足分をカバーするため、特に研究分担者の分担分に関わるジルコン結晶を含む火成岩の調査・採取の日程を当初予定よりも多くする。次年度使用額はそのための旅費として使用する。
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