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2016 年度 実績報告書

3地点からの全天大気光撮像による極冠域電離圏広域イメージング観測

研究課題

研究課題/領域番号 26302006
研究機関電気通信大学

研究代表者

細川 敬祐  電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (80361830)

研究分担者 田口 聡  京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80251718)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード大気光観測 / 電離圏 / 極冠パッチ / 極冠オーロラ
研究実績の概要

平成 27 年度 10 月からカナダ北部のイウレカにおいて観測を開始した全天大気光イメージャの運用を継続し,これまでで計 2 シーズン分の良好なデータを取得できている.これにより,既設の 2 台の全天イメージャ(カナダレゾリュートベイ,ノルウェーロングイヤービイエン)と組み合わせて,極冠域電離圏環境の広域イメージングを行い,極冠パッチや極冠オーロラなどの広域構造を可視化することができている.

平成 28 年度は,イウレカに渡航するチャーター機のスケジュールとの調整がつかず,イウレカを訪問して機器のメンテナンスを行うことができなかったが,現地の観測サイトスタッフと密に連携を取ることで,観測のモニタリングや不具合への対応が問題なく行えている.観測データは,衛星回線経由でカナダ本土のトロント大学を経由して,日本まで転送されている.2016-2017 年冬期の観測データに関してはすでに回収が完了しており,良好なデータを取得できていることが確認されている.また,レゾリュートベイとロングイヤービイエンに既設のイメージャに関しても,遠隔制御を行い冬期シーズンの観測を予定通り行うことができている.既存データの解析に関しては,ロングイヤービイエンの高時間分解能大気光観測によって得られたデータを用いて,極冠パッチの後縁部において Gradient-drift Instability と呼ばれる交換型プラズマ不安定によってつくられる指状構造が形成されていることを明らかにした.また,同じくロングイヤービイエンのデータを用いて,極冠パッチが,昼間側カスプ領域において極方向に伝搬するオーロラ(Poleward Moving Auroral Forms: PMAFs)によって生成されていることも示した.これらの 2 つの成果は,Journal of Geophysical Research 誌に掲載されている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

光学系,筐体,冷却 CCD カメラ,光学フィルター,コントロール PC からなる全天イメージャシステムを完成させ,名古屋大学宇宙地球環境研究所においてテスト観測を行った後,2015 年 7 月にカナダのトロントに空輸した.その後,イメージャは協同研究者の Fogal 博士によってイウレカに輸送された.平成 27 年 10 月に研究代表者の細川がカナダに出張し,イエローナイフで Fogal 博士らと合流し,チャーター機でイウレカに渡航した.イウレカでは,すでに到着していた全天イメージャの設置作業を行った.10 日間の作業で,設置から観測データの確認までの全てを行うことができた.また,観測システムに対して日本から衛星インターネット回線を用いた接続が行えるような設定を行い,観測状況の確認が行える環境を構築した.観測は PC による自動制御で行われており,観測をスタートした 2015 年 10 月下旬から 2017 年 3 月上旬までの 2 シーズン分に亘って良好なデータを取得することができている.イウレカで得られたデータはトロント大学のサーバーを経由して,電気通信大学および名古屋大学宇宙地球環境研究所の解析サーバーに転送されている.光学校正時のデータを用いて,生画像を絶対発光強度に変換する作業を行い,全天画像のムービーや南北断面の時系列プロットを作成しウェブで公開するシステムの構築を完了した.既設の 2 台の全天イメージャ(レゾリュートベイ,ロングイヤービエン)も順調に観測を継続しており,現在,イウレカのデータを組み合わせた極冠域電離圏環境のグローバルイメージングに基づいた,極冠パッチや極冠オーロラの広域構造の研究を実施している.

今後の研究の推進方策

引き続き 3 地点における大気光観測を継続する.カナダのイウレカ,レゾリュートベイには平成 29 年秋に渡航し,全天イメージャのメンテナンス作業および観測の立ち上げを行う.また,平成 27 年度に購入したデジタルカメラを設置し,天候を確認するための観測を行う.これにより,天候を自動的に判定することができるようになるため,大規模な統計解析を行うことが可能になる.ロングイヤービイエンに関しては,平成 29 年 8 月に渡航し観測システムのメンテナンスを実施する.また,平成 29 年 12 月に予定されているカスプ・極冠域をターゲットとした JAXA のロケット実験に地上サポート観測のひとつとして参加し,極冠パッチの生成機構についての研究を実施する予定である.ロケットの打ち上げウィンドウ期間中にはロングイヤービイエンに渡航し,ロケットのサポートに最適化した観測を実施する予定である.

観測の実施と並行して,得られたデータの解析も進めていく.イウレカ,レゾリュートベイ,ロングイヤービイエンの 3 地点で同時にポーラーパッチが観測されている事例を抽出し,電離圏観測データと相互補完的に組み合わせることで,1) ポーラーキャップパッチの生成過程の理解: 生成領域の空間分布,生成に寄与する物理過程の解明,2) ポーラーキャップパッチの輸送経路の把握: 輸送経路の動的な追跡,背景対流との関連性の理解,3) ポーラーキャップパッチの特性変化の把握: 輸送中の特性(密度・空間構造)の時間変化の理解,に取り組む予定である.また,必要に応じてレーダーや衛星による同時観測事例の解析も行っていく予定である.

次年度使用額が生じた理由

H28 年度は,イウレカへのチャーター機のフライトスケジュールの調整ができず,イウレカへの渡航を行うことができなかった.そのため,イウレカへの出張費用として計上していた予算がそのまま残ることとなった.

次年度使用額の使用計画

H29 年度は秋にイウレカへの渡航を行う予定であり,次年度使用額の予算をそのために使用をすることを考えている.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] トロント大学/ダルハウジー大学/ニューブランズウィック大学(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      トロント大学/ダルハウジー大学/ニューブランズウィック大学
    • 他の機関数
      1
  • [国際共同研究] オスロ大学/スバールバル大学(ノルウェー)

    • 国名
      ノルウェー
    • 外国機関名
      オスロ大学/スバールバル大学
  • [雑誌論文] Horizontal profile of a moving red line cusp aurora2017

    • 著者名/発表者名
      Taguchi, S., Y. Chiba, K. Hosokawa, and Y. Ogawa
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research

      巻: 123 ページ: 3509-3525

    • DOI

      10.1002/2016JA023115

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Periodic creation of polar cap patches from auroral transients2016

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa, K., S. Taguchi, and Y. Ogawa
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research

      巻: 122 ページ: 5639-5652

    • DOI

      10.1002/2015JA022221

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 磁気北極付近における極冠パッチの光学観測: 発光強度の UT, IMF By 依存性について2016

    • 著者名/発表者名
      岡村紀,細川敬祐,塩川和夫,田口聡,大塚雄一,小川泰信
    • 学会等名
      地球電磁気・地球惑星圏学会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県・福岡市)
    • 年月日
      2016-11-19 – 2016-11-23
  • [学会発表] Sun-aligned arc の運動メカニズム再考: 3 台の全天カメラと短波レーダーによる観測2016

    • 著者名/発表者名
      木村洋太,細川敬祐,塩川和夫,田口聡,大塚雄一,小川泰信
    • 学会等名
      地球電磁気・地球惑星圏学会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県・福岡市)
    • 年月日
      2016-11-19 – 2016-11-23

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公開日: 2018-01-16  

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