研究課題/領域番号 |
26302007
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後藤 和久 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (10376543)
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研究分担者 |
菅原 大助 ふじのくに地球環境史ミュージアム, その他の部局等, 准教授 (50436078)
中村 教博 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (80302248)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 津波堆積物 / 津波 / 島嶼 / 波源 |
研究実績の概要 |
本研究は,これまで重視されてこなかった各国の本土近隣の島嶼地域には,近地・遠地津波の履歴や規模の推定精度を大幅に向上するための重要な地質学的情報があるという発想に基づき,島嶼部における古津波研究を行い津波履歴と規模を明らかにすることを主目的としている. 八丈島においては,標高5m以上の海食崖の上に巨礫が点在していることを確認し,そのサイズ・空間分布を調べた.これらの巨礫の堆積要因を明らかにするため,崖下または崖端からの打ち上げについての数値モデルを開発して数値計算を実施した.その結果,崖上への打ち上げは,極めて規模の大きい高波あるいは周期の短い津波で可能であるのに対し,崖上での移動については津波だけでなく台風の高波でも十分説明がつくことがわかった. ニュージーランド・チャタム島では,巨礫分布調査に加えて掘削調査により砂質堆積物の分布を調べた.その結果,巨礫とほぼ同時期に砂質堆積物が堆積していることがわかった.また,沿岸地形の発達史について検討し,年代測定結果とあわせて巨礫および砂質堆積物の堆積時期と堆積過程について検討を行った. 環太平洋においてこれまでに発生した津波と日本近海の地震津波との関連を検討するため,米国ハワイ州Kauai島Anahola地区の湿地帯において津波堆積物の地質学的調査を行った.ハンドオーガーおよびジオスライサーを用いた約30地点の柱状掘削により,現地の地質状況を確認するとともに,地層中に1946年アリューシャン地震による津波,および約500年前の巨大津波,さらには高潮等のイベントにより堆積したと考えられる砂層の面的な分布に関するデータを取得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの実施内容で,現地における基礎データをおおむね収集することができた.
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今後の研究の推進方策 |
巨礫の堆積状況や堆積年代,および砂質堆積物の分布状況などをさらに明らかにするため,各島において引き続き現地調査を実施する必要がある.また,数値計算を今後実施する予定であり,地形データの収集・整備が必要である.八丈島については地形データの収集が終わっており,ハワイにおいても計算に必要な地形データは得られるものと考えられる.一方,チャタム島はニュージーランドの離島であり,高精度の地形データは得られないが,海外の協力者を通じて可能な限り精度の良い地形データを入手し,数値計算を実施する予定である.これらの成果は,代表者や分担者,協力者により国内外の学会で発表し,その成果を国際誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ハワイにおいては,本格的な掘削調査を実施するための調査候補地選定をまず行う必要があった.効率的に研究を実施するために,本年度は最少人数で予備調査を実施した.そのため,旅費において次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
現地調査地を絞り込むことができたため,本格的な掘削調査を本年度は実施する.試料分析については,年代測定や非破壊分析費用などが生じることから,その経費として使用する.また,地形データ作成にあたり作業が発生するため,謝金あるいは人件費が発生すると見込まれる.
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