研究課題/領域番号 |
26303018
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研究機関 | ものつくり大学 |
研究代表者 |
林 英昭 ものつくり大学, 技能工芸学部, 講師 (70409671)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 建築歴史・意匠 / 東洋建築 / ベトナム |
研究実績の概要 |
本研究はベトナム中部に所在する「ディン」と称される大規模木造建築について設計技術の特質を具体的に明らかにすることを目指すものである.これによりベトナム中部の伝統木造建築の設計技法に関する知見の総合的な整理を目指している.併せて村落内での「ディン」の位置づけを解明するために,所在する村落の歴史と構造についても調査を実施する.補助事業期間4年間に遺構の実測調査および歴史・村落構造調査を「23件程度」実施する計画である. 本年度は「1. 準備調査および調査対象の選定」,「2. ベトナム中部のディンの実測」,「3. ベトナム中部の村落構造調査」の3点を実施した.上記「1」に関しては4年間の調査対象とする23棟を選定するために,トゥアティエン・フエ省全域(山岳部のア・ルオイ県を除く)を踏査し,全96棟のディンを実見した.うち51棟が木造建築であった.これらを架構太さ,規模,創建年代,現況,所在地によって順位を付け,対象遺構21棟および準対象遺構16棟を選別した.なお現時点では踏査したトゥアティエン・フエ省内の7県のうち,フォン・ディエン県とフオン・トゥイ県では木造のディンが確認できていない.今後も探索を継続する必要がある.上記「2」に関しては計6棟の実測調査を実施した.基礎的な配置図・平面図・立面図・断面図の作成のほか,柱径,柱高さ,横架材および登り梁の断面形状・寸法を詳細に実測することに努め,概ね当初計画通りの情報を確保し得た.上記「3」に関しては計6件を実施した.事前に調査票を用意し,各村落で共通の項目について情報が得られるように努め,人口・地勢・産業・歴史等の村落の概要のほか,ディンを中心とした祭祀等についても聞き取りを進め,村落内でのディンの位置づけの解明を目指している.現地協力者とともに各村落の首長等への聞き取りを実施,合わせて地図資料および村落内の歴史史料の探索も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象の選定については一部に調査対象が無い地域が生じたことが想定外であった.この問題は次年度も引き続き探索を続けることで解消したい.一方で本研究課題の主部である実測調査および村落構造調査については計画の「4件」を上回る「6件」を完了し,当初の計画以上に進展した. よって,全体の達成度としては,おおむね計画通りに進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の主部である実測調査および村落構造調査については,現在までのところ,顕著な問題点は発生していない.次年度以降も着実に調査を実施していきたい. ただし調査対象の選定については,十分な数の候補が確保できている一方で,一部に対象遺構が無い地域が生じている.引き続き探索を続ける必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は急速な円安の進行と同時にベトナム国内での物価の高騰が顕著であったため,調査委託費等の高騰に備え,設備備品の購入を見合わせた.また旅費に関して研究協力者との日程調整の結果,当初予定より滞在日程が延べ10人日程度減じた.主にこの2点により次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
円安・物価上昇の進展状況を見て,次年度の設備備品の購入費,調査委託費および海外旅費へ充当する
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