研究実績の概要 |
本研究はベトナム中部に所在するディンと称される大規模木造建築について設計技術の特質を具体的に明らかにすることを目指すものである.既往の調査研究に加え,規模の面で阮朝宮殿建築に類する大規模木造建築であるディンの実測により,宮殿,ディン,伝統家屋の三種の建築の設計技法が比較可能となることを目指している.これによりベトナム中部の伝統木造建築の設計技法に関する知見の総合的な整理を目指している.補助事業期間4年間に遺構の実測調査および歴史・村落調査を「23件程度」実施する計画である. 最終年度は,前年度既に調査件数30件を達成していたこともあり,新規調査は計2件に留め,各物件の不足データについて,補足調査と収集したデータの整理・分析に努めた.いずれの物件も建築調査と村落調査を併行して行った.調査件数は4年間で合計32件となり,当初計画の「23件程度」大きく超え,研究計画を当初予定に対して4割増の件数を達成することができた. 個別の調査と併行して,これまで収集した実測データの総合的な整理・分析に努め,その成果を平成29年度日本建築学会大会(広島工業大学)にて発表し,平成30年度も同大会(東北大学)にて発表が決定済みである.また研究成果を広く公開すべく,全容を図録としてベトナム語でまとめ,『トゥアティエン・フエ省のディン建築(Hayashi Hideaki, Pham Dang Nhat Thai, Kien Truc Dinh Lang Thua Thien Hue, Nha Xuat Ban Thuan Hoa, Hue, 2018)』としてベトナムにて出版した.出版した図書は現地テレビ局の取材を受けるなど,一定の反響が得られているところである.
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