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2015 年度 実績報告書

インドネシア・バリ島のカルデラ活動と地熱資源ポテンシャル評価

研究課題

研究課題/領域番号 26303020
研究機関福岡大学

研究代表者

田口 幸洋  福岡大学, 理学部, 教授 (00108771)

研究分担者 渡邊 公一郎  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10182916)
糸井 龍一  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50108768)
奥野 充  福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードインドネシア / バリ島 / カルデラ / 火山形成史 / 地熱 / 温泉 / 噴気ガス / 年代測定
研究実績の概要

H27年度は,カルデラ形成に関する火山層序の調査と,地熱徴候(温泉湧出地)に付随するガスの地球化学的な調査を行った.
二重カルデラ構造を持つバツールカルデラの新規カルデラ形成に関与したものがBatur ignimbriteであることが明らかとなり,またその分布はかつては古期カルデラの底に強溶結して分布するとされていたが,カルデラ内ばかりでなく,非溶結のものがカルデラの外側の山麓に広く分布することを確認できた.また,後カルデラ期の噴出物と考えられていたPenelokan降下堆積物は,Batur ignimbriteと密接な成因関係にあることも露頭観察から明らかとなり,従来のカルデラ形成機構を再検討する必要がある.また,ブヤン・ブラタンカルデラの後カルデラ火山形成史の検討を地形学的な観点から見直し調査を行った結果Sengayang火山とAdeng火山が後カルデラ火山としては最も古く,Pohen火山,Lesung火山, Tapak火山の順で形成されていることが明らかとなった.これは従来のK-Ar年代による火山層序とは異なることも明らかとなった.
温泉および冷噴気に伴うガスの捕集を行い,特に希ガスの同位体比の分析を行った.その結果,ブヤン・ブラタンカルデラおよび南東の火山体斜面に分布する温泉に伴う希ガスは,マントル起源(マグマ起源)のものが直接大気起源とものと混入していることを示唆している.これは,従来考えられていたカルデラからの地熱流体の横流れでは説明が困難で,南にある温泉群の下部から直接これらが上昇してきていることを示唆している.このことは,この下部には高温の地熱系の上昇部が存在している可能性が高く,この地域の地熱探査に大きな指針を与えてくれる可能性があることが明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

バリ島のカルデラ形成史や形成機構に関する調査では,1年目に全体的な従来の火山層序と照らし合わせながら,全体的な露頭分布の把握に努めた.また,ブヤン・ブラタンカルデラ周辺では,Ar-Ar年代測定の試料も採取することができた.2年目は1年目の結果を基に,より詳細な野外調査を行い,バツールカルデラの従来の形成機構では説明できない事実を露頭観察から見いだすことができた.また,ブヤン・ブラタンカルデラでは後カルデラ火山活動の形成史が従来の報告結果と異なることを明らかにできた.このことはこの地域の地熱資源の分布の観点からも重要で,温泉付随ガスの結果と合わせて,本地域の地熱開発の指針に役立つ,
地熱徴候に関する調査では,1年目は全体的な地熱徴候地の分布の把握し,それに伴う温泉水の採取と分析を行い,温泉の地球化学的特徴を明らかにした.その結果は,従来の結果と調和的であったが,従来報告されている以外の温泉地も見つけ,データの蓄積が行えた.また,まったく地熱変質帯の調査は従来行われていなかったので,ブヤン・ブラタンカルデラ内に分布する冷噴気周辺の変質帯調査を行い,そこがかつでは高温の火山噴気活動の中心部であることを明らかにした.2年目は,主に温泉水に付随するガスの採取を行った.その結果,従来の本地域のモデルを再考しなければならない結果が得られた.すなわち温泉付随のバブルガスの希ガス同位体比(3/4He比-Ne/He比関係)は,マグマと大気の混入ライン上にあり,地殻起源の混入の影響がほとんどないことが明らかとなった.このことはブヤン・ブラタンカルデラ内で上昇してきた熱水が,地下浅所で側方移動し,カルデラ中心から8-16km南方へ流動して温泉ができたとする従来の解釈よりも,カルデラ南方の温泉地域には別個に地熱流体の上昇があることを示唆しており,今後の地熱開発に新しい知見を与える.

今後の研究の推進方策

バリ島に存在する2つのカルデラの形成史と形成機構に関する研究では,2年目に詳細な形成過程が把握でき始め,またその両者の関係を明らかにできる2つのテフラの存在(Baturカルデラのペネロカンテフラとロンボク島のSamalas火山のAD1257噴火の火山灰層)が有力であること野外で確認できたので.これらの鍵層を用いて,火山層序のより詳細な調査を行い,両カルデラの形成過程を明らかにしていく予定である.また,1,2年目で採取した試料の年代測定結果も結果が得られてくるので,鍵層以外の層に対してもより定量的な火山層序の年代を与えて行く予定である.これらを総合して,バリ島の2つのカルデラ形成史と形成機構を明らかにするよていである.
地熱徴候,特に2年目に温泉付随ガス(特に希ガスの同位体比)からブヤン・ブラタンカルデラの南側山体斜面の地熱系に関する新知見がえられたので,ガス採取を残りの温泉地からも採取し同様な検討を行う予定である.また,本地域の地熱水の源である地表水の同位体比分布を把握するために,未採取の温泉水のほかに,湧水,湖水,河川水の採取を系統的に行い,地熱系を循環する水の流動状況を把握する.また,本地域の地熱徴候地の水銀の土壌分布濃度を明らかにして,その地域に発達する地熱流体を支配する断裂系の検討を行う.
これらの両結果を基に,バリ島のカルデラに発達する地熱徴候地の地熱系モデルを構築し,資源開発に寄与できる知見を抽出し供給する.

次年度使用額が生じた理由

測定機関の都合により,Ar-Ar年代測定を期間中に終えることができなかった.

次年度使用額の使用計画

今年度,Ar-Ar年代測定を行う予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Gadjah Mada University(Indonesia)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      Gadjah Mada University
  • [学会発表] バリ島北部,バツールカルデラのペネロカン噴火の推移2016

    • 著者名/発表者名
      小林哲夫・アグン ハリジョコ・アイ ワヤン ワルマダ・渡辺公一郎・永田知研・中村俊夫・田口幸洋・奥野 充
    • 学会等名
      International Meeting on Eruptive History and Informatics
    • 発表場所
      熊本大学
    • 年月日
      2016-01-23 – 2016-01-24
  • [学会発表] バリ島北部,ブヤン・ブラタンカルデラの後カルデラ火山の噴火史2016

    • 著者名/発表者名
      奥野 充・アグン ハリジョコ・アイ ワヤン ワルマダ・渡辺公一郎・永田知研・中村俊夫・田口幸洋・小林哲夫
    • 学会等名
      International Meeting on Eruptive History and Informatics
    • 発表場所
      熊本大学
    • 年月日
      2016-01-23 – 2016-01-24
  • [学会発表] Characteristics of Geothermal manifestations in/around the Buyan-Bratan caldera, central Bali, Indonesia2015

    • 著者名/発表者名
      Koki Okamura, Sachihiro Taguchi, Ryuichi Itoi, Agung Harijoko, I Wayan Warmada, and Koichiro Watanabe
    • 学会等名
      New Zealand Geothermal Workshop
    • 発表場所
      Taupo, New Zealand
    • 年月日
      2015-11-18 – 2015-11-20
    • 国際学会
  • [学会発表] インドネシア共和国バリ島の地熱徴候の特徴2015

    • 著者名/発表者名
      田口 幸洋 ・岡村 幸紀・糸井 龍一・ 渡邊 公一郎・Agung Harijoko・I Wayan Warmada
    • 学会等名
      日本地熱学会平成27年別府大会
    • 発表場所
      ビーコンプラザ(別府市)
    • 年月日
      2015-10-20 – 2015-10-24

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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