研究課題/領域番号 |
26304001
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田村 憲司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70211373)
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研究分担者 |
上條 隆志 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10301079)
山路 恵子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00420076)
藤原 英司 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 土壌環境研究領域, 研究員 (20354102)
高橋 純子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30714844)
川田 清和 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70529859)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌 / 砂漠化 / 黄砂 / 環境汚染物質 / エストロゲン / モンゴル / ステップ / ゴビステップ |
研究実績の概要 |
北東アジアの大陸において2000 年代初め以降、最大規模の砂嵐が多発しており、大気中へ巻き上げられた砂塵(黄砂)の飛来も頻繁に観測されており、その影響は深刻で、北東アジアの広範囲に及んでいる。研究代表者らは、2008 年以降、Cs-137 など放射性核種を土壌粒子トレーサーとして用いることによって、飛来する砂塵の量および起源を解明した。この結果から、モンゴル、中国の過放牧地帯の砂漠化しつつある草原が砂塵の発生地であることを明らかにした。本研究では、それら地域の表層土壌および砂塵中のヒト毒性物質を含む環境汚染物質の動態を解明し、我が国への影響について明らかにすることを目的としている。 平成27年度は、モンゴル国中央部のフスタイ国立公園ステップとモンゴル南部のゴビステップを中心に調査を行った。 上記調査の結果、以下のことが明らかとなった。1)ゴビステップにおいて、放牧圧が高くなると、A層が風食によって失われ、炭酸塩を多く含んだBk層が表層となっていた。また植生の種組成も変化し、軽度放牧ではStipaが優占種であったが、重度放牧ではよりアルカリ耐性の強いAlliumとなった。以上のことから、ゴビステップにおける放牧圧の増加により、肥沃なA層を流亡させ、Bk層が表層となることで、pH、有機炭素、土壌構造が変化することが明らかとなった。2)Tuul川沿岸土壌からエストロゲン様物質であるEstronが検出された。多環芳香族炭化水素(PAHs)では12物質が検出された。うち、国際がん研究機関が分類する発がん性リスクが疑われる物質は、Estron, Benzo〔a〕anthracene, Dibenzo〔a,h〕anthracene, Benzo〔b〕fluoranthene, Naphtharene, Indeno〔1,2,3-cd〕pyreneの6物質であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
黄砂発生域の表層土壌から、環境汚染物質、特に、環境ホルモン活性を示すエストロゲンや発ガン性を示す多環芳香族炭化水素が検出されたことは、注目に値する。また、その起源もウランバートル周辺からのものであることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、さらに、上記調査地点の評価を詳細に行い、ウランバートルよりも下流域のステップ域および南部のゴビステップ域において、今年度と同様な調査及び解析を行うとともに、中国内蒙古自治区フルンボイル草原についても調査する。
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