研究課題
インドネシア、スラウェシ島 には固有の7種のマカク属が生息している。これらの種は遺伝的に非常に近縁な種であり、分布の境界で交雑帯を形成しているため種分化の研究に最適である。本研究ではスラウェシ島のマカク属を用いて、種分化や種特異的な形質に関わる遺伝子を単離し、霊長類の種分化の機構を明らかにすることを目的としている。平成 29 年度はスラウェシ島北部でMacaca nigraとM. nigrescensの調査を行い、これまでに調査したM. tonkeana 、M. heckiと合わせて連続的に隣接する4種を解析することが可能となった(寺井、Suryobroto、Kanthi)。M. tonkeanaとM. hecki それぞれ11個体ずつの全遺伝子配列の解析を行った(寺井、今井)。その結果、これら2種は共通祖先でボトルネックを経験した後、約5万世代前に分岐し、最近交雑を起こしていることが明らかになった。これらのデータから種間で完全に分化した座位を抽出した。このような座位には種間の違いを作り出す遺伝子が存在すると予想され、実際に採食や食性に関わる遺伝子が存在していた。これら遺伝子の機能と生態における役割について活発な議論を行い、研究の発展のための計画につなげた(寺井、松村、今井、Suryobroto、Kanthi)。平成 29 年度には、M. tonkeanaとM. heckiに加えて、残りの5種のスラウェシマカクそれぞれ2個体ずつと、外群としてブタオザルの全遺伝子配列を決定した(寺井、今井)。この配列をもとにスラウェシマカク7種の系統関係を推定した結果、7種はほぼ同時期に4系統に分化したことが明らかになり、M. tonkeanaとM. heckiの分岐とスラウェシ島の地質年代を考慮すると、7種は現在のスラウェシ島が形成されてから島の中で急速に種分化をしたことが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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