研究課題/領域番号 |
26304017
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
原田 光 愛媛大学, 農学部, 研究員 (40150396)
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研究分担者 |
上谷 浩一 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80638792)
大久保 達弘 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10176844)
原 正利 千葉県立中央博物館, 生態・環境研究部, 主席研究員 (20250144)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東南アジア熱帯多雨林 / 遺伝的多様性 / フタバガキ科 / ブナ科 / 集団遺伝学 |
研究実績の概要 |
原田は11月7日より11月26日までインドネシア、スマトラ州グヌンレイジャー国立公園およびトバ湖周辺で調査を行い、フタバガキ科およびブナ科の葉のサンプルを採集した。採集したサンプルからはDNAを抽出した。一方リュウノウジュ属のサンプル済みのサンプルについてマイクロサテライトおよび葉緑体DNAの塩基配列の決定を行ってSTRUCTUREおよびIMによる集団構造の解析を行った。 上谷は8月22日より29日までインドネシア、スマトラ島ジャンビ近郊のHarapan Rainforestで調査を行い、フタバガキ科5種120個体の葉のサンプルを採取した。採集したサンプルからはDNAを抽出した。また、これまでに採集済みのフタバガキ科ショレア属のいくつかの種について、マイクロサテライトを用いた集団遺伝学的解析を進めた。 大久保は、2015年8月10日-26日、ボルネオ島サラワク州ケラビット高地バリオ(Bario)周辺のブナ科樹木のインベントリーを実施し、それぞれ46点(Castanopsis 5種(12点),Lithocarpus 15種(27点),Quercus 2種(6点)Trigonobalanus 1種(1点))のサンプルを採取した。また2014年採取のボルネオハイランド産ブナ科樹種の標本庫での同定作業を行った。 原は昨年度までに採取した標本について同定と整理を進めた。これまでにボルネオ産ブナ科標本300点について、同定を終了、さく葉標本を作製し、千葉県立中央博物館標本庫に収蔵した。また、H27年度にボルネオで大久保達弘らが採集したブナ科標本52点について同定と標本化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では東南アジア熱帯多雨林において低地常緑樹林を代表するフタバガキ科樹種と高地常緑樹林を代表するブナ科樹種のサンプル採集をスンダ地域を全体を網羅して行い、マイクロサテライトおよび葉緑体DNAを主体とする遺伝子マーカーを用いて集団遺伝学的、系統地理学的解析を行って第4紀におけるその起源を明らかにしようとするものであるが、フタバガキ科についてはリュウノウジュ(Dryobalanops)について、またブナ科についてはカクミガシ(Trigonobalanus)について全域をカバーするサンプルが得られ、解析を進めているところである。当初の計画にほぼ沿った形で研究が進展しているが、調査地へのアプローチや、種の同定にかかる専門家の調達などに困難が生じており、より多くの種の採集を目指しているが、十分とはいえない。今年度はこれまでに採集したサンプルを見直し、不足分を補う形で調査と採集を進める。また当該課題の最終年度であるので、実験室での作業の完了、DNAサンプルの整理保存、解析結果のまとめ等に全力で取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
原田はインドネシアスマトラ島南東部にあるバンカ島およびベリトゥン島でフタバガキ科樹種のサンプル採集を行う。これらの島嶼はスマトラ島とボルネオ島の中間に位置し、最終氷期のあと、海水面の上昇により陸地化したスンダ大陸棚が二つのブロックに分断されたときに最後に切り離された部分と考えられ、両ブロック間の遺伝子流動を解析する上で重要な位置を占めている。ここで得られたサンプルを含めて、マイクロサテライトおよび葉緑体DNA塩基配列の決定をリュウノウジュ(Dryobalanops aromatica)について行い、現在の東南アジア熱帯雨林の起源を第四紀更新世に求め、いつ頃どの様な経緯をたどって現在の森林が成立したのかを明らかにする。 上谷は26年度に採取されたTrigonobalanus verticillata集団について葉緑体DNA塩基配列を決定し、これら集団の起源と集団構造を明らかにするための研究を実施する。27年度に採取されたフタバガキ科についてマイクロサテライト分析を実施し、集団サイズの歴史的変遷を推定し、熱帯林サイズの歴史変化との関連性を明らかにする。 大久保は、ボルネオ島サラワク州バラム川流域でこれまで実施したグヌン・ムルッド山、バリオ高地(高標高域)の結果を踏まえ、2016年度はバリオ高地からミリまでの中~低標高域でのブナ科植物の水平・垂直分布の現地調査を2016年8月に実施する。また、2015年にバリオにて採取した標本の標本庫における同定作業を行う。 原は、海外での野外調査は今年度も見合わせ、採集標本の同定と整理を中心に行う。その結果に基づき、ボルネオにおけるブナ科植物の水平、垂直分布についての解析を進める。また、ブナ科植物の多様性と生態戦略に関する文献調査と原稿の執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
上谷は26年度に予定していたTrigonobalanus verticillataの配列解析を進展させることができなかったため、そのための試薬購入代金を次年度に繰り越した。原は計画していた野外調査を行わなかったため、その経費の残が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上谷は今年度新規採集分を含めてTrigonobalanus verticillataの配列解析を行うためこの費用にあてる。原はこれまでに採集したブナ科サンプルにつて同定作業を行うのでこのための費用とする。
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