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2016 年度 実績報告書

東南アジア熱帯多雨林の起源-遺伝的多様性からたどる第四紀の森林動態

研究課題

研究課題/領域番号 26304017
研究機関愛媛大学

研究代表者

原田 光  愛媛大学, 農学部, 研究員 (40150396)

研究分担者 上谷 浩一  愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80638792)
大久保 達弘  宇都宮大学, 農学部, 教授 (10176844)
原 正利  千葉県立中央博物館, 生態・環境研究部, 主席研究員 (20250144)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード東南アジア熱帯多雨林 / スンダ地域 / 遺伝的多様性 / フタバガキ科 / ブナ科 / 遺伝構造 / 分子集団遺伝学
研究実績の概要

本研究では分子集団遺伝学的手法をもちいてスンダ地域の熱帯多雨林の生成過程を明らかにする事を目的としている。スマトラ島、マレー半島、ボルネオ島から広く代表的な樹種のサンプル採集を行い、マイクロサテライトおよび葉緑体DNAの塩基配列変異に基づいて遺伝子解析を行う。28年度に原田はスマトラ島ルンビオ原生林でフタバガキ科樹種のサンプル採集を行った。一方大久保はボルネオ島バリオからミリにかけてブナ科樹木のサンプル採集を行った。これらについて原は種の同定を行った。この調査により、バラム川流域の最高地点(2,423m)から低地までのブナ科標本が採取されたことになり、ボルネオ島のブナ科の垂直分布パターンとその要因を考察する材料をそろえることができた。採集したサンプルからはDNAを抽出し、分子マーカーを用いた遺伝子解析を進めている。原田はDryobalanops aromaticaおよびD. beccariiについてマイクロサテライトおよび葉緑体DNAを用いた解析をほぼ完了した。その結果、広域分布種であるD. aromaticaについてはマレー半島とスマトラ島の集団がグループとして、ボルネオ島との集団と遺伝的に分化していること、またこの分岐がほぼ最終氷期の前後に起こったことを示した。また分岐前の集団は現在より20倍以上大きく、熱帯では氷河期においても熱帯雨林が広く広がっていたことを示唆した。一方、上谷はスマトラ島ハラパンおよびマレー半島アエルヒタムで採集したShorea 属3種でマイクロサテライトの変異を調べ、過去の集団サイズ変動について検証した結果、アエルヒタムで最近の集団の有意な拡大(expansion)を検出した。このことは氷河期にはサバンナ植生が拡がっていたと考えられるマレー半島の熱帯雨林が氷河期後に急速に分布を拡大したことを示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で計画したスンダ地域における低地林のフタバガキ科樹種では予定した樹種のサンプリングを完了し、現在遺伝子解析を中心に作業を行っているところである。リュウノウジュ属のD. aromaticaおよびD. beccariiではほぼ予定の解析を終了したが、D. oblongifoliaについては解析の途中である。ショレア属では、S. leprosula, S. parvifolia, S. curtisiiおよびS. macrophillaについて遺伝子解析を行っているところであり、現在部分的な結果を得たところである。また比較対象とする高地常緑林ではカクミガシ(Trigonobalanus vertisillata)の採集を完了し、すでにDNAの抽出も終わっている。現在遺伝子解析の準備を進めているところである。

今後の研究の推進方策

原田、上谷はフタバガキ科ではリュウノウジュ属およびショレア属を中心にスンダ地域での採集を行い完了した。マイクロサテライトについては十分な量のマーカーが調達できているので、今後集団遺伝学的な解析を推進する。Dryobalanops aromatica, D. beccarii, D. oblongifoliaおよびShorea macrophillaについては解析結果を論文にまとめ今年度中に投稿までを完了する予定である。一方高地常緑林の代表樹種として選んだカクミガシについては葉緑体DNAの変異解析を先に進め、並行してマイクロサテライトマーカーの開発を行う。十分なマイクロサテライト遺伝子座が調達できた後に集団解析を行う。大久保、原はスンダ地域で採集したブナ科樹木サンプルの同定を完了し、調査地の地理的区分と種の分布との関係を明らかにする。なお原は千葉県立中央博物館を29年3月に定年退職したため、29年度は研究協力者として本研究に参加する。

次年度使用額が生じた理由

代表者原田は遺伝子解析のサンプル数が予定より少なくなったため経費の残が生じた。研究分担者原は健康上の理由から予定していた国内および海外での野外調査を取りやめたため経費の残が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成28年度までに予定していたインドネシアでの試料採集が完了し、現在抽出したDNAを用いて集団構造の解析を行っているところであるが、より精度の高い結果を得るために調査遺伝子座の数を増やしてデータを得ると共に、最近開発された高度な計算機プログラムの使用準備をしている。このため予算を塩基配列決定のための消耗品費と外注費、および論文の校正と投稿費として使用し、研究の完成を期す。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 太平洋側ブナ林におけるブナ豊凶が堅果食性小蛾類の最優占種ブナヒメシンクイにもたらす飽食効果2016

    • 著者名/発表者名
      山路貴大・逢沢峰昭・駒井古実・大岡智亮・大久保達弘
    • 雑誌名

      日本森林学会誌

      巻: 98 ページ: 26-30

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] フタバガキ科リュウノウジュ属(Dryobalanops)の2種、D. beccariiとD. aromaticaの間の雑種形成について2016

    • 著者名/発表者名
      原田光・Fifi G Dwiyanti・上谷浩一
    • 学会等名
      第5回森林遺伝育種学会
    • 発表場所
      東京大学農学部(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-11-11
  • [学会発表] マレーシア・サラワク州におけるブナ科植物の分布と植生2016

    • 著者名/発表者名
      原正利・大久保達弘・Rnatai Jawa・Paul Chai
    • 学会等名
      植生学会第21回大会
    • 発表場所
      大阪産業大学(大阪府大東市)
    • 年月日
      2016-10-23
  • [学会発表] 壱岐対馬の植生変遷に関する花粉分析学的研究2016

    • 著者名/発表者名
      内山隆・江上邦博・原正利・野井英明・志知幸治
    • 学会等名
      植生学会第21回大会
    • 発表場所
      大阪産業大学(大阪府大東市)
    • 年月日
      2016-10-23
  • [学会発表] スンダ地域におけるリュウノウジュ(Dryobalanops aromatica)の系統地理2016

    • 著者名/発表者名
      原田光・Fifi G Dwiyanti・上谷浩一・Iskandar Z Siregar・Bibian Diway・Lucy Chong
    • 学会等名
      第88回日本遺伝学会年次大会
    • 発表場所
      日本大学国際関係学部(静岡県三島市)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-10
  • [学会発表] Genetic structure of Dryobalanops beccarii (Dipterocarpaceae) in northeastern Borneo and the relation with D. aromatica2016

    • 著者名/発表者名
      Ko Harada, Fifi Dwiyanti, Koichi Kamiya
    • 学会等名
      10th Flora Malesiana Symposium
    • 発表場所
      Royal Botanical Garden (Edinburgh, England)
    • 年月日
      2016-07-11 – 2016-07-15
    • 国際学会
  • [学会発表] スンダ地域におけるリュウノウジュ(Dryobalanops aromatica)の系統地理2016

    • 著者名/発表者名
      原田光・Fifi G Dwiyanti・上谷浩一・Iskandar Z Siregar・Bibian Diway・Lucy Chong
    • 学会等名
      第26回日本熱帯生態学会年次大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] インドネシア・ナトゥナ諸島のレフュジア:Aquilaria malaccensis葉緑体ハプロタイプの地理的分布2016

    • 著者名/発表者名
      上谷浩一・三宅郁也・Henti H Rachmat・Atok Sbiakto
    • 学会等名
      第26回日本熱帯生態学会年次大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] マレーシア・サラワク州クチン近郊のブナ科植物の分布について2016

    • 著者名/発表者名
      原正利・大久保達弘・Rnatai Jawa・Paul Chai
    • 学会等名
      第26回日本熱帯生態学会年次大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [図書] コナラの絵本2016

    • 著者名/発表者名
      大久保達弘
    • 総ページ数
      40
    • 出版者
      農文協
  • [図書] ブナの絵本2016

    • 著者名/発表者名
      大久保達弘
    • 総ページ数
      40
    • 出版者
      農文協

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公開日: 2018-01-16  

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