研究実績の概要 |
本研究では分子集団遺伝学的手法をもちいて島嶼東南アジア、スンダ地域の熱帯多雨林の生成過程を明らかにする事を目的としている。スマトラ島、マレー半島、ボルネオ島の低地および髙地常緑樹林からそれぞれを代表するブナ科樹種およびフタバガキ科樹種のサンプル採集を行い、DNAを抽出して分子マーカーを用いた遺伝子解析を行う。原田はフタバガキ科リュウノウジュ属(Dryobalanops)7種についてマイクロサテライトおよび葉緑体DNAを用いた集団解析を行い、ほぼ完了した。結果は2報の英語論文にまとめ、1報はすでに英国のRoyal Botanic Garden, Edinburghの発行する雑誌Sibbaldiaに受理され、もう1報は他の国際誌に投稿中である。上谷はマレー半島各地およびマレーシア、サラワク州各地で採集したショレア属(Shorea)3種(S. curtisii, S. leprosula, S. parvifolia)についてマイクロサテライトおよび葉緑体DNAを用いた集団解析、および3種間の雑種形成メカニズムに解する研究を行った。大久保および原はマレーシア・サラワク州クチン、同エンカリ、および同バラム川流域で採集したブナ科樹木の種同定をおこない、各採集地における水平および垂直分布を明らかにし、その分布マップを作成した。種同定については新たにDNAバーコーディングの手法を導入し、同定率向上のための改善を行った。採集したサンプルから抽出したDNAは将来的な研究に備えてDNAデータバンクとして整備している。
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