研究課題/領域番号 |
26304018
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研究機関 | 国立研究開発法人 農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
林 健太郎 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 物質循環研究領域, 上席研究員 (70370294)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 硝化 / 高緯度北極 / 氷河後退域 / 窒素循環 / 陸域 / 細菌 / 古細菌 / 鳥類営巣地 |
研究実績の概要 |
本研究は,高緯度北極の氷河後退域において,環境条件と硝化特性(硝化能,硝化微生物フロラ)との関係,氷河後退年数が異なる複数地点のクロノシーケンスによる硝化特性の遷移速度,そして,加温処理に対する硝化特性の遷移速度の応答などの解明を目的とする.平成27年度は7月18日~8月5日にかけてノルウェー北極スバールバル諸島ニーオルスンに赴き,以下の調査を実施した. ①硝化特性の遷移と加温の影響: 東ブレッガー氷河後退域に国立極地研究所が設置した囲い地2箇所(サイト1および2)のそれぞれに,加温区1つと対照区一つの調査プロットを設け,均質化土壌を充填したコアを必要数埋設し,地温と土壌水分のセンサーとデータロガーを設置し,加温区にパッシブ式加温を行うためのオープントップチャンバーを設えた.均質化した土壌の一部を日本に持ち帰って硝化能と土壌理化学性の一部を測定した.均質化により硝化能はよく揃っていることを確認した. ②硝化特性のクロノシーケンス: 東ブレッガー氷河後退域において,航空写真や衛星画像に基づき,1936,1969,1977,1990,1995,2008,および2015年の氷河末端位置において表層土壌を採取した.なお,2015年の氷河末端位置はGPSトラッキングにより把握した.資料を日本に持ち帰って硝化能を測定し,硝化能が必ずしも氷河後退後年数に応じて変化しないことを確認した. ③海鳥の営巣の影響: フローニンゲン大学のマルテン・ローネン博士の協力を得て,ブロムストランド島のミツユビカモメ営巣崖の崖錐土壌を採取し,また,各地点で一酸化二窒素の放出速度を調べた.土壌は日本に持ち帰って硝化能,脱窒能,および土壌理化学性の一部を測定した.崖錐土壌の硝化能と脱窒能は対照地の数百倍~千倍も高い値を示し,鳥類営巣地の周辺が窒素循環のホットスポットであることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には当初研究計画どおりに硝化特性の加温応答を調べるためのオープントップチャンバーの設置が行えた.また,平成26年度には実施できなかった土壌試料の日本への輸入を行うことができ,データを順調に得ることができたことから,進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降,本研究は当初計画どおり遂行する.ただし,囲い地のうち氷河後退後の年数がはっきりとしている箇所はサイト1と2の2箇所のみであることから,加温応答の調査はこの2箇所を対象とする.また,シーズ研究と位置づけていた鳥の営巣地における調査を順調に進めることができたことから,次年度以降は更なるシーズの探索にも挑戦する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の交付申請後に生じた所属機関の輸入禁止品(土壌など)の輸入自粛措置を受けて当年度の土壌試料の日本への持ち込みと分析を断念したことに伴って消耗品を中心に次年度使用額が生じた影響が残っている.
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次年度使用額の使用計画 |
現地調査の研究協力者の旅費および土壌試料の硝化能および理化学性の分析に要する消耗品に充当する.
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