研究課題/領域番号 |
26304019
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高井 正成 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (90252535)
|
研究分担者 |
西村 剛 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80452308)
平山 廉 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (00238396)
河野 礼子 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 研究主幹 (30356266)
鍔本 武久 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (20522139)
楠橋 直 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (70567479)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 化石霊長類 / 進化史 / 東アジア / 第三紀 / 第四紀 |
研究実績の概要 |
(1)ミャンマー中央部の中新世後半~鮮新世のイラワジ層を対象に、霊長類を含む陸生脊椎動物化石の発掘調査及び地質調査をおこなった。具体的には、中期中新世のタンビンカン地域、中新世末のチャインザウク地域、後期鮮新世のグウェビン地域の3地点で調査をおこない、グウェビン地域でSemnopithecus属(ハヌマンラングール属)の遊離歯化石を発見した。またこれらの調査で発見した大量の脊椎動物化石を分類し、現地の研究者と協力しながら、クリーニングと分類・同定作業を進めている。 (2)これまでにミャンマー中央部(チャインザウク地域とグウェビン地域)の発掘調査で発見していたコロブス類化石の同定作業を進めた。その結果、2種類の新属新種を記載し、アジア地域のコロブス類の進化に関する論文として複数の国際専門誌で発表した。 (3)ミャンマーでの発掘作業で霊長類と共に産出した哺乳類化石の記載を進め、複数の国際専門誌に発表した。とくにグウェビン地域の後期鮮新世の小型哺乳類化石(齧歯類・兎型類)の同定により、同地域の年代をほぼ確定することができた。 (4)中国南部の広西壮族自治区崇左地域の複数の洞窟から見つかった更新世の霊長類化石の記載作業をすすめ、10属の霊長類がほぼ同時期に生存していたこと、また大型のホミノイド類であるGigantopithecusや大型のオナガザル類のProcynocephalusなどが更新世の中頃に絶滅したことを示した。また同地域には現在生息していないオランウータン、ドゥクモンキー、キンシコウなどが、同地域の完新世まで生息していたことを示し、中国南部における霊長類の進化史と形態変化に関する論文を複数の国際専門誌で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミャンマーと中国の発掘調査で霊長類化石は順調に見つかっている。ミャンマーの化石は2種類の新属新種のコロブス類として記載され、国際学術専門誌で印刷中である。中国で見つかっている大量の霊長類化石も分類・同定作業が進展しており、既にGigantopithecusと旧世界ザル類の化石は3編の論文として国際学術雑誌で公表された。さらに詳しい形態解析に関する論文も現在投稿中である。ミャンマーの発掘調査の成果に関しては、日本語の総説論文として特集号の出版を準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)ミャンマー中央部のイラワジ層を対象とした発掘調査を継続して、さらなる霊長類化石と動物化石の発見に努める。特に年代特定に有効な齧歯類などの小型哺乳類化石の発見に努め、年代幅の確定を進めたい。同時に地質調査を充実させることにより、年代推定の方法を模索したい。具体的には古地磁気学的調査の検討と、火山性堆積物の発見を目標とする。また霊長類と共産するカメ類の化石標本が充実してきたので、その同定・記載作業を進めることにより、古環境復元をおこなう。 (2)中国広西壮族自治区での更新世の洞窟堆積物の発掘調査は、中国側の研究者が中心となって順調に進んでいる。これらの調査で得られている霊長類化石のほとんどが遊離歯化石なので、これを3次元計測器で計測し、より詳細な形態解析を進める。特にこれまでに見つかっているマカク類の遊離歯化石の種レベルでの分類作業を確立させたい。またオランウータン化石の同定を進め、現在では絶滅してしまった東南アジア大陸部のオランウータンの進化史の解明を目指す。
|