研究課題
近年の温暖化の影響で昆虫の分布が変化するとともに、コナジラミなどの難防除害虫が媒介する植物ウイルスが世界的に急速に拡大し、emerging virusとして大問題となっている。この状況は、ジカ熱やインフルエンザの流行といったヒトのウイルス病の状況と同一である。このため、わが国でもインドネシアでもコナジラミ伝搬性ウイルスが激発しているが、コナジラミは小さくて防除が難しく、最近では薬剤耐性虫が出現して農薬の効果が低下している。また、消費者の減農薬志向もあり、わが国では弱毒ウイルス(ワクチン)の利用を含めた総合的防除法(IPM)の確立が急がれている。そこで本研究では、ウイルス病激発地のインドネシアで難防除害虫のコナジラミ、アブラムシが媒介する強毒ウイルス、およびその弱毒ウイルスを探索し、圃場レベルで利用できるワクチンの選抜法を確立するとともに、他の手法も併せて防除法の確立を目指す。そこで平成28年度もインドネシアを訪問し、ウイルス病激発地でウイルス感染作物の採集を行った。その結果、新たにナスとトウガラシの黄化・白化症状を解析し、その病原ウイルスを解明するとともに、ウリ科の病原ウイルスではウイルス遺伝子の組換えが頻繁に発生しており、弱毒ウイルスの分離が難しいことが判明した。今年度のインドネシアにおける採集で、コナジラミ伝搬性ウイルス病の発生が極めて少ない圃場が1か所見出された。そこで詳細に観察したところ、コナジラミの天敵のタバコカスミカメが大発生していた。インドネシアでは、タバコカスミカメを利用したコナジラミの防除法はまだ確立されていない。さらに本年度もインドネシア側の共同研究者とセミナーを開催し、防除法確立に向けて議論した。以上、3年間の研究で、ワクチンの現地開発とともに、天敵利用を含むIPM体系の構築がインドネシアでは極めて重要であることが判明した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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