研究課題/領域番号 |
26304027
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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研究分担者 |
名波 哲 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70326247)
上谷 浩一 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80638792)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生態学 / 熱帯林 / 保全 / 生物多様性 / 系統 / マレーシア / サラワク |
研究実績の概要 |
1.DNAバーコードデータの整備と分子系統樹の構築:面積52ヘクタールの調査区内から55科146属370種について各種1~5個体の葉サンプルを採取し、調査地のフィールド標本庫に保管した。また、既存のプライマー情報を基に調査地のフタバガキ科のrbcL, matK, trnH-psbA領域をPCR増幅できるプライマーを開発し、塩基配列を決定してフタバガキ科69種の分子系統樹を作成した。 2.長期動態データの整備と各樹種のニッチ評価:大面積調査区の4度目の再測定準備を完了した。共同研究者であるサラワク森林局とCenter for Tropical Forest Science(アメリカ)の研究者と数度にわたって協議し、現地での毎木調査推進に必要な設備、機材、人員、等を全て整えることができた。 3.栽培実験による実生期のニッチ保守性の検証:系統関係を考慮して実験の対象樹種を選定した。なお、2014年度中には、調査地では十分な結実が見られず、実験に必要な苗木を確保することが出来なかった。 4.群集全体のニッチ保守性の検証:属より上位の分類群について調査地の主要643種の系統樹をPhylcomを用いて既存の系統関係から推定した。得られた系統関係と各樹種の動態特性、ハビタット特性の関係を解析した結果、動態特性は近縁種ほど似ており、ハビタット特性は近縁種ほど異なっていることが示唆された。また、フタバガキ科69種については、新たに取得した葉緑体DNAデータに基づいた詳細な分子系統樹に基づいた解析を行ったところ、フタバガキ科でも群集全体とほぼ同様の結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.個体数の多い種については、DNAバーコード作成のための葉のサンプリングを予定通り進めることが出来、全体の3分の1の種の採取が完了した。ただし、日本へのサンプルの輸出許可を申請したが、年度内には一部の種についてしか許可が得られなかった。そのため、計画していたDNA抽出と塩基配列決定は一部の種(フタバガキ科)についてのみしか実施できなかったが、許可取得に大きな問題は見当たらないため、次年度以降に順次実施可能と考える。 2.大面積調査区の再測定の現地施設設置、必要機材の準備、調査チームの編成は計画通り終了し、作業を実行するための現場の準備は完了できた。現在、3カ国の協同研究者間での研究費支出手続きの最終確認を進めており、これが整い次第再測定を実施予定である。測定開始には至っていないが、慎重に準備を進めたため、測定開始後には予定通り作業が進むことが期待できる。 3.栽培実験については、当初から2014年度には対象樹種選定と圃場確保のみを予定しており、これらは完了できた。一斉開花結実があれば、苗を確保する計画であったが、十分な結実は見られなかったため苗の確保はできなかった。 4.当初の予定通り既存系統データと動態データを用いた解析方法を開発し、予備的な解析を実施することができた。 また、フタバガキ科については当初予定していなかった詳細なニッチ保守性解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.引き続き葉のサンプル採取を続ける。また、輸出許可の手続きを進め、許可が下りた種から順次日本にサンプルを持ち帰り、DNA抽出と塩基配列の決定を進める。更に、フタバガキ科以外の分類群についてもPCRに必要なプライマーの開発を行う。 2.できるだけ早期に大面積調査区の再測定を開始し、2015年度中にはを完了させて、データ入力を進める。 3.2015年度中に一斉開花結実が起これば、対象種の苗を育てて栽培実験を開始する。2015年末までに結実が見られない場合は、計画を変更して林内の実生を用いたニッチ保守性の検証のための調査を行う。 4.新たに得られる塩基配列データを用いてより詳細な分子系統樹を作成しニッチ保守性の検証を進める。塩基配列が得られた分類群ごとに順次、詳細な解析を進め、最終的には群集全体の解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
採取したDNAサンプルの輸出許可が一部のサンプルについてしか得らなかったため、2014年度に予定していた日本国内でのDNA抽出、及び、塩基配列決定は一部のみしか実施できず、関連する試薬、謝金、外注費の一部は支出しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
DNAサンプルの輸出許可はすでに申請中であり、2015年中には得られ予定である。2014年度に実施できなかったDNA抽出と塩基配列は2015年度以降に追加実施することとし、残額は分析経費(試薬、謝金、外注費)として次年度予算と合わせて使用する。
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