研究実績の概要 |
本研究は,アホウドリ類の漁業活動との相互作用を装着型データロガーをつかって明らかにすることを目的としている.ハワイで繁殖するコアホウドリに装着回収したデータロガーから得られた画像,GPS位置,加速度を解析したところ,ハワイ諸島の北側亜熱帯水域と移行領域において海表面に死んで浮いている大型のイカを食べていることがわかった.イカとの遭遇は漁船やクジラとの遭遇とは関係なかった.イカ遭遇場所は互いに百キロ以上離れており,イカの発見は遭遇の直前であった.コアホウドリは直線的に飛行しながら偶発的にイカを発見していることがわかった.また,亜熱帯域において延縄漁船との遭遇が,船名が分かる程度に鮮明な画像で記録され,いずれも揚縄中または投縄中であった.コアホウドリは約8 km手前から漁船を認識しており,漁船を見つけると漁船に追随してゆっくり移動していることがわかった.さらに,ハビタットモデリングの手法で海洋環境を分析したところ,風が弱く,低水温の海域でイカと遭遇しやすく,クロロフィル濃度が高く,水温が低く,風が強い場所ほど漁船を追随する傾向があった.日中は水温が低い場所で,夜間は風が弱い場所で地域限定探索行動をする傾向にあることがわかった.さらに,鳥島においてクロアシアホウドリで同様の調査を行ったところ,データロガー回収率が悪かったが,回収できた2個体からは良好な位置情報と画像が得られ,いずれも日本海溝部を含む海盆域を利用し,キンメ底延縄船とイカの死体が写っていた.いずれの種においても繁殖期後半のロガー回収率は極端に低く十分なデータが取れなかった.そのため,個体レベルでの繁殖成績への影響は十分には分析できなかった.
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