研究課題/領域番号 |
26304035
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片倉 賢 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (10130155)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 感染症 / 獣医学 / 住血性寄生虫 / 疫学 / 家畜 / 野生小型哺乳動物 / ミャンマー / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
動植物相の豊かなミャンマーは、インド亜大陸と東アジアを結ぶインドシナ半島の地理的要所である。しかし、寄生虫や媒介節足動物に関する疫学的調査は散発的な状況にとどまっている。申請者らは平成22-25年度の海外学術調査基盤研究Bの補助をうけて、ミャンマー各地における牛のタイレリア原虫、バベシア原虫および肝蛭の感染状況とこれらの寄生虫の遺伝子型を明らかにした。本研究は、その発展的継続疫学研究であるが、平成26年度においては、まず、イヌにおけるバベシア原虫の感染状況を調査した。すなわち、河口にある旧首都ヤンゴンの飼育犬46頭ならびに内陸部にある首都ネピドー近郊の飼育犬20頭の末梢血DNAについて、バベシア属の18S rRNA遺伝子を標的としたnested PCRならびにBabesia gibsoni特異的nested PCRを実施したが、どちらの検査においても全頭陰性であった。また、野生小型哺乳動物については、Mus属19個体、Rattus属19個体、Bandicota属7個体、Suncus属1個体から血液DNAを抽出することができた。現在、バベシア属原虫をはじめとする各種血液原虫感染の有無について特異的PCRによって検査を進めている。一方、ミャンマー中央部の農場で飼育されているヤギを対象として、トキソプラズマ感染の血清疫学に関するパイロットスタディを実施した。その結果、抗体陽性率は11.4%であり、農場における他の動物の飼育やネコの棲息がトキソプラズマ感染に関わる危険因子であることが示唆された。 一方、バングラデシュにおける野犬のリーシュマニア症の疫学については、新規血清診断用抗原の特定を目的として、イヌ血清を用いたウエスタンブロッティング解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) ミャンマー獣医科学大学とミャンマー獣医協会の協力のもとに、ミャンマーの2大主要都市で合計66頭のイヌの血液検体を採取することができた。(2) ヤンゴン大学、パテイン大学、ピィー大学の協力のもと、野生小型哺乳動物の種類別捕獲頭数も順調に増加している。(3) 当初の計画書には取り上げていなかったが、ヤギおよび猫におけるトキソプラズマ感染の疫学調査も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ミャンマーの牛のタイレリアおよびバベシア感染については、媒介ダニの特定に焦点を絞る。(2) ミャンマーにおける野生小型哺乳動物の捕獲については、各地域での捕獲数の増加を目指す。(3) 野生小型哺乳動物の血液原虫については、トリパノソーマ属原虫も検査・解析する。(4) ミャンマーのトキソプラズマ症については、原虫の遺伝子解析を進めていく。(5) バングラデシュにおける調査時期と調査場所については、政情とカウンターパートの都合をふまえて、適切に判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたバングラデシュでの調査が実施できなかったことなどから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外旅費や技術補助員の人件費などに充てる。
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