研究課題
動植物相の豊かなミャンマーは、インド亜大陸と東アジアを結ぶインドシナ半島の地理的要所である。しかし、寄生虫や媒介節足動物に関する疫学的調査は散発的な状況にとどまっている。申請者らは平成22-25年度の海外学術調査基盤研究Bの補助をうけて、ミャンマー各地における牛のタイレリア原虫、バベシア原虫および肝蛭の感染状況とこれらの寄生虫の遺伝子型の特性を明らかにした。本研究は、その発展的継続研究であり、平成27年度の研究実績は次のとおりである。(1)イヌにおけるバベシア原虫の感染状況を再検査したところ、旧首都のヤンゴンおよび内陸部の首都のネピドー近郊の飼育犬のそれぞれ約50%と30%からBabesia gibsoni原虫を nested PCR法で検出することができた。また、ネピドー近郊の飼育犬からはBabesia vogeli原虫のDNAも検出できた。(2)野生小型哺乳動物については、平成26年と27年の調査でMus属54個体、Rattus属24個体、Bandicota属8個体から血液DNAを抽出することができた。バベシア属原虫DNAはどの個体からも検出できなかったが、Trypanosoma lewisi原虫のDNAをRattus属およびBandicota属から検出することができた。(3)ミャンマー中央部の農場で飼育されているヤギについては、抗トキソプラズマ抗体の検出を報告したが、今回、ネコの糞便中オーシストからトキソプラズマ原虫のDNAを検出することに成功した。以上の結果は、ミャンマーにおけるイヌバベシア、Trypanosoma lewisiおよびToxoplasma gondiiの存在をDNAレベルで初めて実証したものである。
2: おおむね順調に進展している
(1)ヤンゴン大学、ピイー大学、マンダレー大学、ミャンマー獣医科学大学との連携のもとに、野生小型哺乳類の捕獲が順調にすすんでいる。(2)ミャンマーにおけるイヌバベシア、Trypanosoma lewisiおよびトキソプラズマの存在をDNAレベルで初めて証明することができた。
(1)ミャンマーにおける野生小型哺乳動物の調査については、未調査の北部での調査を実施する。(2)トキソプラズマ原虫の遺伝子解析を進めていく。(3)当初の計画には盛り込んでいなかったが、大型半野生動物であるアジアゾウの寄生虫感染の予備的な調査を実施する。
使い切る必要性がなかったので、わずかの次年度使用額が生じた。
次年度の消耗品にあてる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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