研究課題
アフリカ大陸は、世界中で飢餓人口が最も多い地域である。家畜の生産性の向上を図ることはこの地域における飢餓対策として重要な位置を占める。この地域における種々の感染症は、家畜の生産性向上を妨げる最も重要な要因の一つとされる。とりわけ、マダニ媒介性原虫感染症による被害は深刻とされ、その実態解明が喫緊の急務となっている。そこで本研究では、アフリカ大陸におけるマダニ媒介性動物原虫感染症の流行実態の解明と予防対策の確立を目指して企画した。本年度に実施した主な内容と成果は下記の通りである。1)西アフリカのベナンとブルキナファッソの畜産農家におけるマダニ媒介原虫・細菌感染症の発生・被害状況について、聞き取り調査を行った。2)ベナンの4地域(Tchaourou地域61検体、Gogounou地域66検体、Nikki地域60検体、Kpinnoun地域20検体)から採集した牛血液サンプルについて、DNAを抽出し、PCRによるバベシア、タイレリア及びアナプラズマのDNA検出を行った。3)バベシア属の原虫感染率を調べたところ、B. bovisの陽性率はGogounou地域で最も高く、約16%に達した。また、B. bigeminaの陽性率はGogounouとNikki地域で高く、いずれも約30%に達した。4)タイレリア属の原虫感染率を調べたところ、T. mutanceの陽性率はGogounou地域では約90%に達したが、他の種は検出されなかった。5)アナプラズマ属の細菌感染率を調べたところ、A. marginaleの陽性率はTchaourou地域では約80%に達した。以上の結果より、西アフリカのベナンにおける牛にはマダニ媒介性原虫・細菌感染症が広く蔓延しており、家畜の生産性向上の障害となっていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した通りの研究が実施できたため。
今後はアフリカで採集したマダニに感染している各種病原体の検査を実施する。
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Parasit Vectors
巻: 9 ページ: 4-17
10.1186/s13071-015-1278-3
巻: 8 ページ: 496-510
10.1186/s13071-015-1106-9