研究課題
アフリカ大陸は、世界中で飢餓人口が最も多い地域である。家畜の生産性の向上を図ることはこの地域における飢餓対策として重要な位置を占める。この地域における種々の感染症は、家畜の生産性向上を妨げる最も重要な要因の一つとされる。とりわけ、マダニ媒介性原虫感染症による被害は深刻とされ、その実態解明が喫緊の急務となっている。そこで本研究では、アフリカ大陸におけるマダニ媒介性動物原虫感染症の流行実態の解明と予防対策の確立を目指して企画した。本年度に実施した主な内容と成果は下記の通りである。1)南アフリカの中央部の畜産農家におけるマダニ媒介原虫・細菌感染症の発生・被害状況について、聞き取り調査を行った。2)96頭の牛から採集した血液サンプルからDNAを抽出し、PCRによるバベシア、タイレリア及びアナプラズマのDNA検出を行ったところ、B. bovis、B. bigemina、T. mutans、A. maginaleの陽性率がそれぞれ6.2%、7.2%、41.6%、54.1%であった。3)91頭の羊・山羊から採集した血液サンプルからDNAを抽出し、PCRによるバベシア、アナプラズマ及びエーリキアのDNA検出を行ったところ、B. ovis、A. ovis、E. ruminantiumの陽性率がそれぞれ4.4%、45.9%、21.3%であった。4)マダニが保有している病原体についてPCR法により検査したところ、タイレリア属、アナプラズマ属、リケッチア属が多数検出された。以上の結果より、南アフリカの中央部における牛・羊・山羊にはマダニ媒介性感染症が広く蔓延しており、家畜の生産性向上の障害となっていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した通りの研究が実施できたため。
今後は、今まで蓄積したデータに基づいて、アフリカの流行地域に適した、新規診断・治療・予防法の考案を試みる。
関連業績等をこのwebページにて公表している。
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http://www.obihiro.ac.jp/~protozoa/