研究課題
平成26年度は下記3項目について実施した。【1.スラウェシ島北部における原虫感染症調査の協力体制の構築】2014年5月23日~5月29日に調査研究拠点のサムトランギ大学へ訪問し、同大学医学部TUDA JOSEF博士、Mongan Arthur医師と研究打合せを実施し、同大医学部学生に対する寄生虫学研究の技術指導、及びヒトサンプルを用いた調査に合意した。2015年2月5日~12日の訪問ではトキソプラズマ検査キットを導入し、同大学及びMongan Arthur医師のクリニックにて技術指導を行った。また、同大学動物科学部Sri Adiani博士との動物サンプルを対象にした原虫感染の調査に関する研究打ち合わせを行い、帯広畜産大学原虫病研究センターとサムトランギ大学動物科学部の間で学術交流協定を締結した。【2.インドネシア全土における原虫感染症調査の協力体制の構築と事前調査】スラウェシ島北部の調査結果の特異性を検証するために、インドネシア全土を対象にした家畜の原虫感染状況の調査を想定し、2015年3月7日~15日にジャカルタ東部にあるスバン家畜疾病診断センターを訪問した。そこでは、血清学診断による原虫病の予備調査を実施し、現地職員にセミナーとワークショップを行った。【3.トキソプラズマ、クリプトスポリジウム感染検出用簡易迅速診断法の開発】トキソプラズマの血清診断用抗原を探索するために、原虫遺伝子40種をクローニングした。これら遺伝子は哺乳動物細胞へ導入してタンパク質を発現させ、抗原性の確認に使用する。クリプトスポリジウムの抗原検出系を開発するために、オーシスト壁の構成タンパク質gp15の組換えタンパク質を作製し、マウスおよびウサギに免疫することで特異抗体を作製した。これら抗体はイムノクロマトの材料として使用する。また、クリプトスポリジウムの遺伝子検査系を構築し、今後のインドネシアでの調査に応用できる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の当初予定として、下記2項目がある。【スラウェシ島北部住民におけるトキソプラズマ、クリプトスポリジウム感染状況の把握】これまでに、調査研究拠点のサムトランギ大学医学および動物科学部のカウンターパートと協力体制を構築することに成功し、技術導入と現地スタッフを対象にした寄生虫病に関する教育プログラムの準備を進めている。さらに、インドネシアの家畜疾病診断センターとの協力体制を構築できたため、インドネシア全土を対象にした家畜原虫病の調査が可能となる。以上より、今後の調査についての研究環境整備が進んでおり、おおむね順調に進展していると判断した。【トキソプラズマ、クリプトスポリジウム感染検出用簡易迅速診断法の開発】これまでに、トキソプラズマ診断用抗原のスクリーニング系の構築、クリプトスポリジウム抗原検出用の抗体作製が完了しており、当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断した。
平成27年度は、スラウェシ島北部におけるトキソプラズマ、クリプトスポリジウム感染状況の調査を実施する。また、家畜動物としてブタに着目し、農場および市場でサンプリングを実施し、感染状況の調査を行う。また、スラウェシ島北部の調査結果の特異性を検証するために、インドネシア全土を対象にした家畜のトキソプラズマ、クリプトスポリジウム感染状況を調査する。インドネシア農業省(Livestock and Animal Health Services, Ministry of Agriculture Republic of Indonesia)と学術協定の締結を進め、インドネシアに8カ所存在する家畜疾病診断センターと協力して調査を実施する。必要に応じて、バベシア、トリパノソーマ、ネオスポラ等のその他の原虫感染状況の調査も加える。本研究での調査結果の報告、学術的成果発表、意見交換会を盛り込んだセミナーを開催し、インドネシアにおける寄生虫感染の現状を紹介することで現地での問題意識を高める。さらに、血清サンプル、糞便サンプルを用いた一般的な寄生虫検査、開発した簡易迅速診断法について技術講習会を開催し、現地の若手・中堅の担当者を対象に教育・技術移転を行う。
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J Vet Med Sci.
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http://doi.org/10.1292/jvms.15-0082
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http://www.obihiro.ac.jp/~protozoa/topics20150317-2.html
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