研究課題/領域番号 |
26304040
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
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研究分担者 |
前川 洋一 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294670)
大屋 賢司 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50402219)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バングラデシュ / 人獣共通感染症 / 流産 |
研究実績の概要 |
バングラデシュの治安悪化により、予定した家畜からの採材を一時見合わせたが、この間にバングラデシュ人民共和国(バングラデシュ)ラジシャヒ管区において、6か所の家畜病院の診察記録から2013年1月から2015年12月までの子牛の出生数と、0-6か月齢の子牛の死亡数および死亡原因を抽出して分析した。いずれの調査地においても出生した子牛の約1割が6か月齢までに死亡していることが分かった。死亡原因としては口蹄疫、肺炎などの感染症が多かった。また栄養失調による死亡が季節に関わらず見られた。現在、データを精査して流産の原因となる病原体の分布状況を調査している。調査したいずれの地域でも冬季に感染症による死亡が増える傾向にあった。バングラデシュにおいては大イードあるいは犠牲祭と呼ばれる宗教行事の前に多数の牛が売買され全国を移動する。インドからの輸入も多い。大イードは1年をおおむね354日とするイスラム歴に基づいて行われるため一般的なグレゴリオ暦における実施日は毎年異なるが、調査期間の2013-2015年については9月末から10月中旬であった。これは雨季から冬季に移る時期と一致しており、この時期に感染が全土に広まったために冬季に死亡数が増加したのかもしれない。また、節足動物が媒介する一部の病原体に感染している牛が郊外に多かった。一方で都市部では感染率が低い傾向にあった。とりわけ、在来品種は無症状のままこれらの病原体に感染している事例が多かった。近年導入された品種とは病原体の分布パターンが違う可能性が強く示唆されており、品種ごとの調査の必要性が示された。なお、ネオスポラについては、近縁のトキソプラズマに比較して感染率がかなり低くこの地域では大規模な浸潤はないものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バングラデシュの治安悪化により予定していた調査が不可能になり進捗が遅れている。現地の協力者に採材を依頼するなどの対応により遅れは取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現地治安が比較的安定してきたため、H29年は現地調査を予定している。これまでの調査により、ホルスタインと在来種の交配個体(現地で広く飼育されている)と在来種(比較的珍しいが、一部地域で多く飼育されている)の間で病原体の分布パターンが異なることが示唆されたのでこの点にも注目して調査を進める。トキソプラズマをはじめとする病原体を分離し、分子遺伝学的な手法により病原体の感染経路を推測することを予定していたが、現地でのテロなどのために計画を一部変更する必要があったことが影響し、これまで実現できていない。したがって本年は病原体の分離に全力をあげ、分子遺伝学的な解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
バングラデシュの治安状況悪化により、予定していた現地調査を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
現地治安は改善傾向にあるので延期していた調査を実施する。次年度使用額に相当する金額はこのための旅費および分析に必要な物品費として使用。
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