研究課題/領域番号 |
26304044
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
多羅尾 光徳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282802)
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研究分担者 |
林谷 秀樹 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30180988)
及川 洋征 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70323756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌学 / 廃棄物再資源化 / 温室効果ガス排出削減 / 人畜共通感染症 / 熱帯農業 |
研究実績の概要 |
1.メコンデルタの小規模農家においてもみ殻くん炭を製造し,2,3および4の活動に提供した。より簡便・安価にバイオ炭(BC)を製造する自発的な技術改良として、農家は雨除けの簡易屋根を設置し雨水浸入防止用に円状に盛り土を施した。また、ホームガーデンから伐採された果樹材等を用いて木炭・木酢液を製造した。 2. 試験農家の水田にBCを施用し,水田における温室効果ガス(GHGs。二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素)のフラックスを稲の生育段階ごとに経時的に測定した。GHGsはチャンバー法にて測定した。水田土壌からのGHGsフラックスはBC施用区と非施用区の間で明瞭な差が認められなかったが,総放出量はBC施用区の方が少なく,BC施用はGHGs放出削減の効果があることが示された。また,BC施用によるイネの生育およびコメ生産量には顕著な影響が確認されなかった。BC施用区と非施用区から水田土壌を深さごと(0,5,15 cm)に採取した。土壌から微生物DNAを抽出し,温室効果ガス生産・消費にかかわる微生物群の解析を行う予定である。 3. BCの畜産への応用を図る研究の基礎的なデータを得る目的で,(1)BCのブタ下痢原因細菌ならびにウィルスの吸着能力,(2)ベトナム・メコンデルタにおける下痢子ブタにおける下痢原因ウィルスの保有状況について検討した。その結果,BCが下痢原因細菌ならびにウィルスを効果的に吸着すること,および,下痢原因ウィルスが子ブタに高頻度で保有されていることが明らかとなった。 4.家畜飼料にBCを添加し,下痢発生が抑制されるか検証した。その結果,BC添加によりブタの下痢発生が顕著に低下することが明らかとなった。ふん便中に含まれる下痢原因細菌ならびにウィルスを解析し,下痢抑制の理由を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,平成27年度は以下の成果を達成した。 (1) 現地の小規模農家が庭先で実施することのできる簡便・安価なBC製造技術を確立した。これまでの活動により、メコンデルタ農村の現状に適したBC普及技術は、ベトナム中部のバックマー国立公園周辺農村と比べて、炭化装置は規模を大きくし、利用技術は集約栽培・飼育に適用できるものが望ましいことが分かってきた。今後、現地での多様なフィージビリティスタディを踏まえて、普及に取り組む必要がある。 (2)現地の水田にBCを施用し,水田土壌から放出されるGHGsを定期採取した。GHGsのフラックスと総放出量を測定した。その結果,BC施用によりGHGsの放出フラックスに顕著な影響は生じないことを見いだした。また,収穫量にも顕著な影響は生じないことを見いだした。 (3)BC施用土壌より土壌を採取し,GHGs生成・消費に関与する微生物の解析に着手した。GHGsの生成・消費に関与する機能遺伝子の解析手法を検討中である。 (4)家畜飼料へのBCの添加が,ブタの下痢抑制に効果のあることを明らかにした。カントー大学周辺の農家数戸の協力を得て,実証試験を進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の課題に取り組む。 1. BCの製造技術とBCの畜産への適用を普及するためのパンフレットを作成する。 2. GHGsの発生に寄与する土壌微生物群の現存量・群集構造を,分子生物学的手法を用いて解析する。温室効果ガスの発生量とこれら微生物群との間に関連があるか,検討する。 3. 現地の複数の農家の協力を得て,メコンデルタで飼育される子ブタの餌にBCを添加し,下痢発生抑制の効果が得られるか検証する。現地の農家が簡易に利用できるBC施用法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
BC施用水田土壌から抽出した微生物DNAの機能遺伝子の解析を行うための手法に検討を要し,当初,使用することを予定していた試薬等の消耗品類に再検討が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
機能遺伝子の解析手法を確立して,使用する消耗品類を確定し,平成28年度において執行する。
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