本年度は、最終年度であり、昨年度調査を行ったブルガン周辺で収集した土壌、根系サンプル、土壌からのDNAサンプルの解析を進め、ブルガン周辺の植生劣化に伴う菌根共生系の変化やグロマリンの分析を進めた。3年間で得られたフスタイ、マンダルゴビ、ブルガンのデータを統合し、降水量傾度に伴う、植生―菌根共生―グロマリン蓄積の変化を総合的に解析した。さらに異なる降水量を有する調査地において、特に放牧による植生劣化が植生―菌根共生―グロマリン蓄積に与える影響を解析した。結果、AM菌類に対する放牧の効果に関しては、最も優勢なAM菌の減少が、すべての調査地で共通して観察された。得られた結果をもとに、鳥取でミーテイングを行うと共に、モンゴルの研究者とも結果の検討を行った。検討結果を取りまとめて、論文を作成し、「Gradients of grazing and aridity in Mongolian grasslands affect the community of arbuscular mycorrhizal fungi 」の論文題目でMycorrhiza誌へ投稿を行った。現在審査中である。さらに、2017年8月には、本研究申請時に計画していた、過去の耕作が植生へ与える影響についても調査を行い、フスタイ周辺では、耕作放棄後にChenopodium類の優占が顕著になることが明らかとなった。また、2018年3月にモンゴル研究者と共同で、モンゴルの放牧地生態系の概要を取りまとめた「Rangeland Ecosystems of Mongolia」をモンゴルで出版した。内容はモンゴル人研究者の利便のためモンゴル語と英語の併記になっている。この出版物中、植生の項で本科研で得られた植生に関する知見も盛り込むことができた。
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