研究課題/領域番号 |
26304047
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 邦義 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20346836)
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研究分担者 |
土居 克実 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40253520)
片倉 喜範 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50264106)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キノコ / ネパール / 微生物 / 菌類 / 生理活性 / 生物多様性 / 抗アレルギー / 抗菌活性 |
研究実績の概要 |
本研究の供試サンプルである全90標本は6目19科40属41種および49の不明種 (sp.) と分類され、多種多様な硬質および軟質菌類が含まれていたことが明らかとなった。メラニン合成に及ぼす影響を検討した。初めに幅広い濃度にて全90サンプルを評価した。各サンプルの細胞生存率が80%以上になるまでサンプル濃度を希釈して試験を行い、コントロールに対する細胞内のメラニン含有率および細胞生存率を各々算出した。また、アルブチンの結果を参考にした上、サンプルが粗抽出物であることを考慮し、ランク分けした。結果、メラニン生成を抑制しつつ、細胞生存率を高く維持するサンプルが全体の約70%を占めていた。また、一方でメラニン生合成を促進するサンプルも見られた。抗菌活性に関しては、全90サンプルを評価した結果、アクネ菌に対する強い抗菌活性が4種のきのこ抽出物で確認された。このうち、特に強力な抗菌活性を示したのはPostia stipicaとInonotus clemensiae抽出物であった。本研究で用いた全90サンプルのきのこエタノール全90サンプルのきのこエタノール抽出物におけるTranら (2013)による抗酸化活性評価 (ORAC法) の報告では、これら4種は特に高い抗酸化活性を示した。ニキビ発症の主な理由としてはアクネ菌が放出するリパーゼや活性酸素による皮脂の過酸化脂質への変化である。そのため、これらのサンプルが有する静菌および作用や殺菌作用、高い抗酸化活性は抗ニキビ作用を有する化粧品や医薬品への応用が期待できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ネパールに足を運び、キノコを収集し、種の同定ならびに機能性評価が、当初の予定以上に進展しており、極めて協力な抗酸化活性、抗菌活性や抗アレルギー活性が見出されており、今後の展開が大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではネパールの野生きのこを用いて、標高による環境変化が野生きのこ抽出物の生理活性に影響を与えるのではないかという仮説も持ちながら実施した。ネパール野生きのこの生理活性試験、標高と生理活性の相関調査により仮説の検証を試みた。その結果、植物と同様にきのこにおいても標高の変化に伴う気温や紫外線等の様々な要因が含有成分に影響を与える可能性が示唆された。しかし、今回の供試サンプルは採取された標高の多様性が少なく、同種個体が少ない等サンプリングにおいて解析に十分に条件を満たすものではなかった。今後は、これらの問題点を補う意図的なサンプリングが必要であり、本研究のように生育環境と生理活性、含有成分等の関連性を調査する上で要となるであろう。上記のように、環境変化が各々のキノコの機能性与える影響を明確にするのは困難でがったが、スクリーニングの中から、極めて抗酸化が強いものや、抗アレルギー効果のたかいもや、メラニン生成に大きく影響を与えるものもあり、創薬資源としては、大変興味深い。今後、引き続き、入手菌を増やすとともに、機能性試験を継続検討し、さらに、成分分析もおこなうことによって、新しい機能性成分が見出される可能性は、高いする。
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