研究課題/領域番号 |
26305001
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石橋 正己 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90212927)
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研究分担者 |
大崎 愛弓 日本大学, 文理学部, 准教授 (50161360)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 薬学 / 生理活性 / 有機化学 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
1)薬用資源調査(天然物探索材料としての植物現地調査):平成26年12月16日から12月23日,研究代表者・石橋は,バングラデシュ国を訪問し,クルナ(Khulna)大学薬学部S. K. Sadhu教授およびダッカ(Dhaka)大学薬学部Firoj Ahmed教授の指導のもと,バングラデシュ北部のシレット市周辺を中心に,熱帯薬用植物資源調査を行った.とくにこれらの地域特有の植物種や現地で栽培される薬用植物を中心に調査・採取を行った.調査・採取した薬用植物は40種近くであったが,一つの種当たり採取量は予備的スクリーニングに最低限必要な量にとどめた. 2)ライブラリー構築とスクリーニング:前年度までに行ってきた資源調査によって採取し,千葉大学側に空輸されてきた植物サンプルについて,有機溶媒による抽出を行い,抽出エキスコレクションの作成を継続的に行った.得られた抽出エキスを用いて種々のシグナル経路(ウィント, ヘッジホッグ,トレイルシグナル,bHLH転写因子等)に対する作用に関するスクリーニング試験を継続して行った. 3)活性成分探索:上記現地調査で入手したバングラデシュ産サンプルについてウィントシグナルに対するスクリーニングを行った結果,ガガイモ科植物由来のカルデノリドcalotropinはCK1αタンパク質を増加させることによりWntを阻害することが明らかとなった.一方,トウダイグサ科植物由来のピリドン型化合物ricinineはCK1α活性を阻害することによりWntシグナルを活性化させた.また,オオバコ科植物からジテルペンscopadulciol,センダン科植物からリモノイドtrichillin H,を単離し,これらの作用機構に関する知見を得た.また,ナス科植物からヘッジホッグシグナル阻害作用をもつ高度に酸化されたステロイド誘導体physarin Hを単離した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本海外学術調査研究は,第1期が2008-2010年,第2期が2011年-2013年と継続して行っており,本研究は第3期(2014-2017)に当たる.毎年研究代表者がバングラデシュに出張し,現地のカウンターパートの協力を得て,薬用植物資源調査を行ってきた.これまでに数多くの薬用植物を調査採取し,当研究室におけるスクリーニング試験に用いてきた.その結果,これまでにトレイル,ウィント,ヘッジホッグシグナルに対するスクリーニングを行い,数多くの活性化合物を単離してきた.さらにそれらの化合物の分子レベルでの作用機構についての解析も行っており,興味深い知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
バングラデシュ在住のカウンターパート(研究協力者)との共同研究をひきつづき継続させ,最低年に1回は現地へ出張し,さらなる天然薬物資源調査を行う.現地において植物サンプルの乾燥・粉末化処理を行い,千葉大学側に空輸し,スクリーニング試験用の抽出エキスコレクションを継続して作製し,これをさらに拡充する.拡充したコレクションを活用してトレイル,ウィント,ヘッジホッグシグナ等を対象としたスクリーニング研究をさらに継続して行っていき,さらに新しい活性成分を見出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予算どおりに研究費を使用したが,物品費(研究試薬等消耗品)について,若干の残額が生じた.少額であったため,あえて使い切ることはせず,次年度に使用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(研究試薬等消耗品)について,26年度予算に若干の残額が生じたが,27年度に使用する物品費(研究試薬等消耗品)の一部とする.
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