研究課題/領域番号 |
26305004
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福井 裕行 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 特任教授 (90112052)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 花粉症 / アレルギー性鼻炎 / アレルギー疾患 / ヒスタミン / 天然物医薬 / 疾患感受性遺伝子 / 細胞内シグナル / PKCδ |
研究実績の概要 |
福井らはアレルギー性鼻炎の症状発現に、3つの細胞内シグナルとその下流の疾患感受性遺伝子(ヒスタミンH1受容体遺伝子、IL-9遺伝子、及び、IL-33遺伝子)の発現亢進が関与することを明らかにした。一方、アユルベーダ医薬には、抗アレルギー作用を期待して用いられるものが多数存在する。代表的な抗アレルギー・アユルベーダ医薬、Tephrosia purpureaのエタノール抽出液は、PKCδシグナル亢進によるヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進に対して抑制作用があることを見いだした。次いで、培養細胞におけるヒスタミンH1受容体遺伝子発現抑制活性を指標にして、Tephrosia purpureaの有効成分の精製・単離を行い、新規benzofuran化合物, 4-methoxybenzofuran-5-carboxamide(MBCA)の同定に成功し、MBCAの有機合成を行った。有機合成MBCAは、HeLa細胞のヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進に対する抑制作用、PKCδリン酸化の抑制作用、及び、PKCδのゴルジ体移行の抑制作用を示した。また、鼻過敏症モデルラットを用いるin vivoの研究において、くしゃみ回数の増加、鼻症状スコアの悪化、鼻かき行動に対する改善作用、及び、鼻粘膜ヒスタミンH1受容体、及び、各種アレルギーサイトカイン(IL-4、IL-5、IL-9 ,IL-13)の遺伝子発現亢進に対する抑制作用を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.アユルベーダ医薬には多数の抗アレルギー作用をもつ医薬が存在するが、どのような薬理機構により抗アレルギー作用を発揮するかについては明確ではなかった。一方、本研究課題代表者、福井は、アレルギー性鼻炎の症状発現には2種類の疾患感受性遺伝子(ヒスタミンH1受容体遺伝子、及び、IL-9遺伝子)の存在を明らかにした。 2.Tephrosia purpureaは、アレルギー疾患に用いられるアユルベーダ医薬である。そこで、この医薬の抽出液のヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進に対する強力な抑制作用を見いだした。 3.ヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進に対する抑制作用を指標にして、Tephrosia purpurea抽出液から有効成分の精製・単離、及び、化学構造決定を行った。その結果、有効成分として、4-Methoxybenzofuran 5-carboxamide(MBCA)の同定に成功した。MBCAは、ヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進、PKCδリン酸化、PKCδのゴルジ体移行を抑制し、鼻過敏症モデルラットの症状を改善した。 4.以上の研究成果により、抗アレルギー・アユルベーダ医薬にアレルギー疾患感受性遺伝子の発現抑制作用を持つ化学物質の同定、及び、その薬理作用機構解明を推進した。
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今後の研究の推進方策 |
1.これまで、スタミンH1受容体遺伝子発現亢進に対する抑制作用を持つ、抗アレルギー・アユルベーダ医薬の研究の推進を行った。 2.次いで、IL-9遺伝子発現亢進、及び、IL-33遺伝子発現亢進に対して抑制作用を持つ抗アレルギー・アユルベーダ医薬を同定する。 3.IL-9遺伝子発現亢進、及び、IL-33遺伝子発現亢進に対する抑制作用を指標にして、アユルベーダ医薬抽出液から有効成分の化学構造の同定を行う。 4.3つの疾患感受性遺伝子発現亢進に対して、それぞれに対する抑制作用を持つ抗アレルギー・アユルベーダ医薬由来の有効成分の併用が、鼻過敏症モデルラットの症状に対する高度な改善作用を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達努力の結果安価に入手できたため残額を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子発現定量実験に関わる試薬の購入に充てる予定である。
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