研究課題/領域番号 |
26305014
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
小林 隆志 大分大学, 医学部, 教授 (30380520)
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研究分担者 |
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 寄生虫 / 免疫 / リーシュマニア / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
全世界で毎年50万人が致命的な内臓型リーシュマニア症 (Visceral Leishmaniasis: VL、別名 カラアザール) に罹患している。インド亜大陸におけるVLは Leishmania donovani に起因し、治療による全身症状寛解から2~4年の後に5~10%の患者がポスト・カラ・アザール皮膚リーシュマニア症 (PKDL) を発症する。PKDL患者の皮膚病巣にはL. donovaniが寄生しており、感染伝搬の感染源となっている。したがってVL の制圧には、PKDLの発症機序を理解し、的確に診断・治療することが不可欠である。本研究の目的は、PKDLの発症機序とリスクファクターを解明し、世界におけるリーシュマニア症のコントロールに貢献することである。そこで本年度はまずバングラデシュにおいてVL患者の治療薬別のPKDL発症率を調査し、その過程で65名の PKDL 疑い例を同定した。PKDL疑い例は、被験者の同意の上で県立病院に搬送され、バングラデシュ政府ガイドラインに沿って検査・診断が行われた。次いでPKDL 確診例の中で研究の趣旨に同意を示した40名、ならびに年齢・性別がマッチし研究の趣旨に同意を示した40名の PKDL 非発症コントロールに関しては、県立病院に紹介され、倫理委員会で承認された研究計画に基づき、治療前の臨床サンプル(血液・尿およびPKDL 確診例患者においては皮膚病変部)が採取され、政府ガイドラインに沿った治療が始められた。本年度採取した治療前サンプルに関しては、寄生虫学的、血清学的解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去にVLの治療を受けた患者(計1463人、男974人、女489人)がいる家屋(家族)を調査の対象とした。1179家屋、計6079人(男3180人、女2899人)を調査の対象として、スクリーニングを行うことが出来た。本スクリーニングを通して、VL患者の治療薬別のPKDL発症率が明らかとなった。その結果、PKDL疑い例として組み入れ基準を満たし除外基準に該当しない65名が PKDL 疑い例として同定できた。その中から 40名のPKDL 患者が研究の趣旨に同意を示し、さらに年齢・性別がマッチし研究の趣旨に同意を示した40名の PKDL 非発症コントロールを研究に組み入れることが出来た。治療前サンプルの寄生虫学的解析に想定以上に時間を費やしているが、交通機関を含めたストの頻発など社会情勢が比較的不安定な中、これだけのことが出来たのは、ひとえにバングラデシュの研究協力者たちのおかげであり、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、我々はVL患者の治療薬別のPKDL発症率を調査し、その過程で PKDL 疑い例を同定した。PKDL疑い例は、被験者の同意の上で県立病院に搬送され、バングラデシュ政府ガイドラインに沿って検査・診断が行われる。PKDL 確診例は、県立病院に入院の上、政府ガイドラインに沿った治療が行われる。本年度は、PKDL 確診例の中で研究の趣旨に同意を示した40名、ならびに年齢・性別がマッチする40名の PKDL 非発症コントロールに関して、治療前ならびに(PKDL群は)治療後定期的に血液・尿・皮膚病変部の臨床サンプルを採取し、病態の解析を進める。皮膚パンチ生検中におけるリーシュマニア原虫の定量的検出、末梢血白血球および皮膚パンチ生検中の宿主免疫関連分子の発現解析、血液生化学検査、血中サイトカイン、血漿および尿検体中の抗原、抗体等の定量、SNP解析を実施する。遺伝子多型(SNP解析)の調査は、PKDL確診例の治療後の採血、およびコントロール群の採血を用いて行う。PKDL発症率との相関を解析し、PKDL発症の成否を規定する分子を特定する。 また PKDL患者から L. donovani を採取・培養して、これを抗原として新規モノクローナル抗体を作製する。これにより PKDL 患者の血清あるいは尿で診断可能な高感度PKDL診断技術の開発を行う。 H28年度は、マウスモデルで L. donovani 感染および治療薬投与を行う。このとき、ルシフェラーゼ発現 L. donovani を用いて感染をモニタする。また PKDL リスクファクター候補分子について遺伝子改変マウスや中和抗体を用いて発現レベルを人為的に操作することで、持続感染や皮疹発症への当該分子の重要性を実験的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月にバングラデシュ国際下痢症研究センターへ出張を予定していたが、情勢不安により渡航を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に予定しているバングラデシュ国際下痢症研究センターへの出張で繰り越した予算を使用する予定である。
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