研究課題
全世界で毎年50万人が致命的な内臓型リーシュマニア症(visceral leishmaniasis: VL 、別名カラ・アザール)に罹患している。インド亜大陸におけるVL はLeishmania donovani に起因し、全身症状寛解から2~4年後に5~10%の患者がポスト・カラアザール皮膚リーシュマニア症(PKDL)を発症する。PKDL 患者の皮膚病巣にはL. donovani が寄生しており、感染伝搬の温床となっている。したがってVL の制圧には、PKDL の発症機序の理解と的確な診断・治療が不可欠である。Mymensingh 県Muktagacha 郡保健センターで2000~2011年に加療されたVL患者1467人のうち40人のPKDL 患者から研究協力の同意を得た。PKDLの診断法は皮膚切開標本中の虫体の証明であるが、感度が低いため、今日ではPCR による虫体DNA の検出が頻用される。PKDL の標準的治療はミルテフォシンの内服であるが、皮膚症状の経過と皮内原虫数の相関は十分には理解されていない。そこで本年度われわれはバングラデシュのPKDL 患者40名に関して、治療前、ミルテフォシン投与終了直後、および投与終了12ヶ月後に、皮疹の広がりを測定し、皮膚検体中の虫体DNA の定量的PCR 解析を行った。皮疹の広がりは、治療の経過に相関して有意に減少した。皮疹の完全消失は、投薬終了直後で3人、12ヶ月後で31人に認められた。一方、皮膚検体中の虫体DNA 量を定量したところ、治療前で15人、治療直後で33人、12ヶ月後で37人がPCR 陰性であり、虫体の消失に続き皮疹が消失するという経過をたどることが示された。実際に、12ヶ月後に皮疹が残存していた7人は全てPCR 陰性であり、皮膚のターンオーバーに時間がかかることが推測された。一方、1人の患者は12ヶ月後に皮疹は消失していたがPCR 陽性であり、皮疹の広がりと虫体DNA量の変化に齟齬を来たす症例も見出された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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