研究課題/領域番号 |
26305015
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
美田 敏宏 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)
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研究分担者 |
大橋 順 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80301141)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マラリア / アルテミシニン / 耐性 / K13 |
研究実績の概要 |
研究開始直前に、アルテミシニン耐性に関連する候補遺伝子K13-propeller geneが同定された(Ariey, Nature 2014)。その後のフィールドおよびラボ研究から、本遺伝子がアルテミシニンへ治療遅延の責任遺伝子である可能性が濃厚になっている。これらの背景のもと、研究計画を一部変更し、本年度はK13の原虫集団における意義について検討をおこなった。 1.アルテミシニン併用療法がマラリアの第一選択薬として導入される前後の検体(2002―2005年と2013年)を用いて、K13の遺伝子変異頻度を解析した。その結果、治療レジメ変更前の検体において、すでに8.6%の原虫にK13変異が入っていたが、いずれの変異もsingletonとして存在していた。変更後の検体では、その頻度は24%まで上昇していた。Y511H以外、全てsingletonであった。Y511Hは14.8%のサンプルに見られ、治療レジメ変更後に何らかの選択を受けて遺伝子頻度が増加したものと考えられる。ただし、本変異はカンボジア、タイ等の近隣でアルテミシニンによる治療遅延との関連が証明されているC580Y変異と異なっており、ミャンマーにおいてアルテミシニン耐性が独立に出現している可能性を示唆している。 2.ミャンマー国内のセンチネルサイトでの広域タイピングに向けて、迅速診断キットからの原虫抽出の最適化を行ったところ、培養原虫の系で2個/μLの原虫密度でもPCRで増幅が可能となった。本方法をミャンマーからの実サンプルに用いて、K13の同定以前にアルテミシニン耐性との関連が示唆されていたMAL13の増幅を試みたところ、検体の保存期間によって異なるものの採取から3ヶ月以内のRDTでは9割弱のPCR成功率となった。今後、K13の解析を広域検体におこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
K13プロペラ遺伝子が同定されたことにより、当初研究計画の一部を実施しなくても、研究計画を十分に達成されることがあきらかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はK13を中心とし、広域検体を用いた耐性拡散のモニタリング、耐性変異のダイナミズム(耐性起源、有利度、集団構造との関連、耐性拡散の将来予測)について検討を進める予定である。その一方で、遺伝マーカーとしての有用性については他のマーカーの探索も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始直前にアルテミシニン耐性の候補遺伝子として、K13-propellerが報告された。このため本年度は既存のサンプルを用いた集団遺伝学的検討を優先させた。候補遺伝子の同定に必要と考えていたフィールド調査および関連する解析を実施しなかったため資金を繰り越すことにした。次年度は本年度の結果をもとに、新たなフィールド調査を計画、実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
輪状体へのアルテミシニン感受性レベルを評価する(Ring-stage survival assay:RSA)手法が最近開発された。本年度はPNGにおいて、本手法を用いたアルテミシニン感受性試験を実施する。当初予定通り最も多くのマラリア患者が見込まれる1月に実施する。調査期間は3週間、50例を目標とする。 ACT併用薬であるピペラキンへの耐性メカニズム解明のため、ミューテーターマラリアをマウスに感染させ薬剤選択を与えている。原虫の耐性レベルが上昇し始めており、今後全ゲノム解析により耐性関連遺伝子変異RNA-seqにより転写レベルの網羅的解析を行う。
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