• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

マラリア原虫アルテミシニン耐性遺伝マーカの開発:フィールドゲノミクスによる解析

研究課題

研究課題/領域番号 26305015
研究機関順天堂大学

研究代表者

美田 敏宏  順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)

研究分担者 大橋 順  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80301141)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードマラリア / アルテミシニン / 薬剤耐性 / K13
研究実績の概要

1. アルテミシニン耐性については、昨年度同様Ring-stage survival assay(RSA)を実施した。アルテミシニン耐性レベルは、「700nMのジヒドロアルテミシニンに6時間exposeしたのちにdrugフリーで66時間培養した場合の生存原虫数」を「drugフリーで72時間培養したときの生存原虫数」で除した%値であるsurvival rateで判定した。ウガンダにおいては112例の熱帯熱マラリア原虫においてアルテミシニン耐性の有無を評価することができ、3例において耐性を示していた。アフリカ大陸においてアルテミシニン耐性原虫の出現を証明した初めての研究となり現在論文投稿中である。なお、パプアニューギニアにおいては80例においてRSAを実施している。現在、RSAの成否を含め解析中である。
2.集団遺伝学的解析のためのサンプリングをパプアニューギニアで実施し、約100例の熱帯熱マラリア原虫陽性血液を濾紙に保存した試料を得た。
3.ミャンマーで実施予定であったパイロット調査は政権交代等の影響もあり、調査地での現地スタッフの目処が立たなかったことから実施はできなかったが、カウンターパートと今後のスムースな調査実施に向けディスカッションを行った。
4.マラリア流行地をほぼ網羅する約600例のアルテミシニン耐性関連遺伝子K13の集団遺伝学解析によりK13には強い純化選択がかかっていることが明らかになった(論文発表 AAC, 2016)。さらに、耐性獲得ののバックグランド変異とされている6つのSNPsをTaqManプローブ法でタイピングし、K13より先にこれら6つのSNPsのいずれかの遺伝子頻度が上昇することを明らかにした(論文執筆中)。
5.アルテミシニンの併用薬として用いられているピペラキンの耐性関連候補遺伝子を同定、現在逆遺伝学的な手法で確認中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ミャンマーでの調査実施に関しては当初予定外であったが、それ以外での進展はめざましい。特にウガンダでの調査によりアルテミシニン耐性原虫を同定し得たことは、グローバルなマラリア対策への貢献という点で大きな成果と考える。

今後の研究の推進方策

本課題は様々な流行地域で実用可能なアルテミシニン耐性原虫遺伝マーカーの開発を目的とする。今後は、既存抗マラリア薬への耐性原虫の出現起源地であるパプアニューギニアとミャンマーに加え、ウガンダを調査地として、薬剤耐性試験、継続マラリア調査を実行する。アルテミシニン耐性遺伝マーカーK13-propeller遺伝師の有用性評価、さらには新たな耐性遺伝マーカーの同定を目指す。
次年度は、
(1)ゲノムワイド関連解析を用いた新たなアルテミシニン耐性遺伝マーカーの同定を試みる。しかし、患者からの血液は原虫ゲノム料が非常に少ないことに加え、ヒト白血球も含んでおり、全ゲノム解析においてノイズとなりうる。いかに白血球を除去するか、さらに原虫DNA量を効率よく増加させ、かつ精製するかが全ゲノム解析のポイントとなる。以上の点における技術を向上させ、まずフィールド検体からマラリア原虫の全ゲノム解析が高いレベルで実施できるようにする。その後に、これまでの研究で同定されたアフリカからのアルテミシニン耐性原虫のアルテミシニン耐性遺伝マーカーを同定する。
(2)RSAによるアルテミシニン耐性のサーベイランスをPNGとウガンダで実施する。
(3)耐性候補遺伝マーカー変異が検出された場合、その変異は、「アルテミシニンとは別の原因によって選択され集団に存在」や「遺伝的浮動によりある地域集団にたまたま存在している」可能性がある。そこで、アルテミシニン導入以前の血液試料を用いて、以下を検討しこのような耐性候補変異の集団遺伝学的特徴を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

当初ミャンマーでの調査を予定していたが、総選挙等での政治的混乱によりフィールドサイトの整備が不十分だったためやむなく当該年度の調査を取りやめた。

次年度使用額の使用計画

フィールドでの調査費用と得られた検体の解析に使用する予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] グル大学/Lacor病院(Uganda)

    • 国名
      ウガンダ
    • 外国機関名
      グル大学/Lacor病院
  • [国際共同研究] デバイン大学(Papua New Guinea)

    • 国名
      パプアニューギニア
    • 外国機関名
      デバイン大学
  • [国際共同研究] 国際保健研究所(ミャンマー)

    • 国名
      ミャンマー
    • 外国機関名
      国際保健研究所
  • [雑誌論文] Plasmodium falciparum Kelch 13: A potential molecular marker for tackling artemisinin-resistant malaria parasites.2016

    • 著者名/発表者名
      Mita T*, Tachibana S, Hashimoto M, Hirai M.
    • 雑誌名

      Expert Rev Anti Infect Ther

      巻: 14 ページ: 125-135

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Little polymorphism at the K13 propeller locus in worldwide Plasmodium falciparum populations prior to the introduction of artemisinin combination therapies.2016

    • 著者名/発表者名
      Mita, T, R Culleton, N Takahashi, M Nakamura, T Tsukahara, CW Hunja, ZZ Win, WW Htike, AS Marma and L Dysoley.
    • 雑誌名

      Antimicrobial agents and chemotherapy

      巻: 1 ページ: 1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Challenging malaria control: do our new genetic tools pave the way for malaria eradication?2015

    • 著者名/発表者名
      Hirai M, Mita T.
    • 雑誌名

      Juntendo Med J

      巻: 61 ページ: 370-377

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Current research topics in Tropical disease; toward the successful control and elimination; Introduction.2015

    • 著者名/発表者名
      Mita T*.
    • 雑誌名

      Juntendo Med J

      巻: 61 ページ: 358-359

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Patterns and dynamics of genetic diversity in Plasmodium falciparum: What past human migrations tell us about malaria.2015

    • 著者名/発表者名
      Mita T*, Jombart T.
    • 雑誌名

      Parasitol Int

      巻: 64 ページ: 238-243

    • DOI

      10.1016/j.parint.2014.09.007.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Global distribution of polymorphisms associated with delayed Plasmodium falciparum parasite clearance following artemisinin treatment: Genotyping of archive blood samples.2015

    • 著者名/発表者名
      Murai K, Culleton R, Hisaoka T, Endo H, Mita T*.
    • 雑誌名

      Parasitol Int

      巻: 64 ページ: :267-273

    • DOI

      10.1016/j.parint.2014.11.002.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Plasmodium falciparum: Genetic diversity and complexity of infections in an isolated village in western Thailand.2015

    • 著者名/発表者名
      Tanabe K, Zollner G, Vaughan JA, Sattabongkot J, Khuntirat B, Honma H, Mita T, Tsuboi T, Coleman R.
    • 雑誌名

      Parasitol Int

      巻: 64 ページ: 260-266

    • DOI

      10.1016/j.parint.2013.09.011.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] アフリカ大陸におけるアルテミシニン耐性マラリアの出現2016

    • 著者名/発表者名
      池田 美恵 、金子 恵、橘 真一郎、Mawagali Betty Balikagala、櫻井 美樹 、八代 聖基、 橋本 宗明 、Alex Olia 、Anywar Dennis 、Auma Mary 、Palacpac Nirianne M. Q. 、平井 誠 、 片岡 正俊 、木村 英作 、Aginya Emmanuel 、坪井 敬文 、堀井 俊宏 、美田 敏宏
    • 学会等名
      第85回日本寄生虫学会大会
    • 発表場所
      宮崎市民プラザ
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-22
  • [学会発表] ミューテーターマラリア原虫ライブラリーから薬剤耐性原虫の単離2016

    • 著者名/発表者名
      平井 誠、池田 美恵、橘 真一郎、美田 敏宏
    • 学会等名
      第85回日本寄生虫学会大会
    • 発表場所
      宮崎市民プラザ
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-22
  • [学会発表] 全世界の熱帯熱マラリア原虫株を用いたアルテミシニン耐性進化の集団遺伝学的解析2016

    • 著者名/発表者名
      橘 真一郎、平井 誠、美田 敏宏
    • 学会等名
      第85回日本寄生虫学会大会
    • 発表場所
      宮崎市民プラザ
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-22
  • [学会発表] ウガンダにおけるマラリア対策を見据えた包括的熱帯熱マラリア薬剤耐性研究2015

    • 著者名/発表者名
      美田敏宏
    • 学会等名
      日本熱帯医学会総会シンポジウム
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2015-12-04 – 2015-12-06
    • 招待講演
  • [学会発表] Comprehensive analysis of Artemether-Lumefantrine efficacy among children with uncomplicated malaria in Northern Uganda.2015

    • 著者名/発表者名
      Betty Balikagala1, Miki Sakurai2, Mie Ikeda3, Yatsushiro Shouki5, Nobuyuki Takahashi 2, Mary Auma6, Edward H. Ntege1, Daisuke Ito1, Eizo Takashima, Nirianne Marie Q Palacpac4, Joseph Okello Onen7, Masatoshi Kataoka 5, Kimura Eisaku4, Toshihiro Horii4, Toshihiro Mita3, Takafumi Tsuboi1
    • 学会等名
      64th Annual Meeting American Society of Tropical Medicine and Hygiene
    • 発表場所
      Philadelphia
    • 年月日
      2015-10-25 – 2015-10-29

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi