研究課題
(1)アルテミシニン+ルメファントリン(AL)による治療効果をモニタリングするため、ALで熱帯熱マラリア患者における治療後の原虫密度を6時間毎の採血により評価した。75例において治療効果モニタリングと新規in vitro薬剤耐性試験法(RSA)結果が得られた。現在結果の解析中である。(2) 前年度までに4例のRSAアルテミシニン耐性原虫をウガンダから見出しているが、Kelch13との関連は弱く、アフリカでは異なった耐性機序を持つ可能性がある。新規耐性遺伝子を同定するため耐性および感受性例において白血球除去後の濾紙血液検体より原虫DNAを抽出、Hiseqを用いて全ゲノム配列を決定した。当初予定していたゲノム増幅法を用いることなく解析に相応しい質の高いゲノムデータを得ることができた。耐性遺伝子の絞り込みを実施すべく、現在ゲノムデータのクリーニングを進めている。(3) RSAをPNGとウガンダで実施、それぞれ約100例においてin-vitroレベルでの耐性度を検証した。ウガンダでは一部の原虫がアルテミシニン耐性であり、前回の結果を裏付けるものとなった。一方、PNGでは耐性原虫は発見されなかった。(4) 2014年にウガンダで外来患者を対象としたALの治療効果モニタリング(day1,2,3,7,28)を実施している。本検体を用いて原虫が残存する検体における既存のアルテミシニン耐性候補遺伝子(9遺伝子13座位)における変異解析を実施した。これら既存変異と治療後の原虫陽性と関連は見られず、アフリカにおける耐性機序は東南アジアと異なっている可能性があることを明らかにした(Malaria J, 2017)(5)ミャンマーから採取した原虫陽性迅速診断キットから原虫DNAを抽出し、kelch13の遺伝子変異分布を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
既存抗マラリア薬への耐性原虫の出現起源地であるパプアニューギニアとミャンマーでの調査を予定していたが、本課題を実施中にアフリカで初めての耐性原虫をウガンダで発見したため、調査地に加えることになった。この耐性原虫はアフリカで出現した可能性が高く、K13変異を持たない耐性原虫も存在することが明らかになった。これにより、アジア、オセアニアに加え、アフリカまで解析を広げることが可能となった。一方、全ゲノム解析による耐性遺伝子の同定が当初予定よりやや遅れているが、これは海外調査を最終年度まで継続する必要が出たこと、上記のように調査を実施する国が一つ増えたことによる。
ウガンダでの調査をさらに進め、K13が関与しない耐性メカニズムの解明を遺伝マーカーの決定を進める。また、いまだアルテミシニンの耐性が出現していないパプアニューギニアにおける調査も継続する。このような推進方策のもと、本年度は以下の研究課題を実施する予定である。1.アルテミシニン併用療法への耐性(治療遅延)のモニタリング2.RSAを用いたアルテミシニン耐性のモニタリング3.ゲノムワイド関連解析を用いた新たなアルテミシニン耐性遺伝マーカーの同定4.明らかとなったアルテミシニン耐性関連変異の原虫集団における意義の解明
ゲノム解析の費用を見積もっていたが、ウガンダにおけるあらたな知見を得たため、翌年の現地調査終了後の解析とした。
次年度の現地調査を優先して実施し、その結果によってゲノム解析をおこなう検体を選択する予定である。次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を決定するため、かかる費用は高価になる。慎重な解析検体の選択が必要となる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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