研究課題
本研究は、アジアにおける長期入所施設に滞在している認知機能が低下した高齢者の行動心理学的徴候(BPSD)の種類と有病率、及び関連要因を調査することであった。日本から3地域、韓国、中国、台湾、タイの7研究施設がそれぞれ100名を目標にデータ収集を行い、計662名のデータが解析可能であった。各参加者の人口統計学的データ、認知機能(Mini Mental State Exam)、認知症の重症度(Clinical Dementia Rating)、BPSDの測定尺度(NeuroPsychiatric Inventory)を使用し、施設間の相違を比較した。認知症の重症度の分布は施設間で異なり、タイ、台湾、日本の老健施設の入居者が認知症の重症度が低い傾向にあった。BPSDの有病率は施設間で差がみられ、認知症患者を主に受け入れる施設は、BPSDの有病率が高かった。しかし認知症の重症度で層化すると、BPSDの有病率の相違はあまりみられなかった。これにより認知症の重症度が、BPSDの種類と有病率に関連していることが示唆された。使用されている抗精神薬の処方に関しては、薬剤の使用割合が施設間で大きく異なっていた。抗精神薬を投与されている者の割合は、日本の病院の認知症ケア病棟と韓国の高齢者入居施設が高かった。認知症の重症度で層化しても施設間の薬剤の処方の差はみられ、保険制度、施設の方針など多くの要因が関係しているものと思われた。しかし、向精神薬の多剤併用(2種類以上)はどの施設でもみられた。失禁に関しては、尿失禁・便失禁の割合は、施設間で大きく異なり、最低が10%で最高が71%であった。便失禁の割合も同様に、4%から57%と大きな差がみられた。殆どの施設では認知症の重症度が失禁の主要な危険因子であったが、日本の老人保健施設などは失禁と認知症の重症度との関係がみられなかった。施設の特徴により失禁の原因が異なることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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