IT産業の発展やエネルギー枯渇問題の深刻化に伴い、アフリカでは地下鉱物資源の採掘が活発に行われている。その一方で、天然起源放射性物質(ウラン・ラジウム・トリウム・ラドンなど)による放射線被ばくが社会的な問題となっている。本研究の対象国であるカメルーンではウランの再開発が行われているが、その周辺地域住民へのラドン等による被ばくが注目されて来た。本研究ではカメルーン国内のLolodorfとPoliの2地域を対象として、地殻ガンマ線による外部被ばく線量と、居住環境内におけるラドン濃度及びトロン濃度を測定し内部被ばく線量を評価した。今年度は日本人研究者3名による現地調査を行い、Lolodorfにおいてすでに測定器を設置している家屋を中心にリアルタイムでラドン濃度を測定した。また大気中に浮遊している微量元素の分析を行うために吸引ポンプを用いてフィルタ上に捕集した。外部被ばく線量調査のために自動車を用いた走行サーベイを実施した。内部被ばく線量の評価については、電源を要しないパッシブ型の測定器を一定期間一般家屋に設置した。外部被ばく線量及び内部被ばく線量に関しては総じて一般的なレベルであったが、ウラン濃集地域ではやや高くなる傾向が見られた。 これまでアフリカの自然放射線被ばくに関するデータは皆無であった。ウラン採掘では作業者に放射線被ばくのリスクが伴うが、周辺住民には屋内においてラドンによる内部被ばくの可能性が高まる。本研究を通じて得られた科学的な知見はもとより、アフリカ大陸における放射線防護研究を根付かせる意義は果たせたと言える。
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