研究課題/領域番号 |
26305022
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 桂子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00211433)
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研究分担者 |
清野 薫子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (10508336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域ストレス / 社会経済水準 / 文化変容 |
研究実績の概要 |
近年の地域紛争においては、多数の一般市民が紛争に起因する心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic Stress Disorder: PTSD)の症状を呈する。地域全体のストレス障害ととらえ、地域単位での予後の追跡と複数のPTSD症状緩和要因に注目した、障害緩和の過程の解明と、地域単位のストレス緩和プログラムによる回復の効果が期待される。 本研究の目的は、アフガニスタン、ヨルダン、タンザニア、モンゴル、バングラディシュを調査地とし、地域全体の長期にわたるストレスが市民の健康にもたらす影響について、地域の治安状況の変化、社会経済状況、保健医療の確保状況、伝統的な社会文化的な習慣の状況をふまえた複合的な影響の分析を行い、地域を対象とするストレス緩和プログラムの効果を検討することにある。 平成27年度は、アフガニスタンにおいて長期の紛争の影響下にある市民の受療行動における社会経済状況の影響を明らかにした。全国家計調査のデータの分析により、貧しい世帯の患者は豊かな世帯の患者より入院医療に直接かかわる費用(診断費、医薬品費)の支出は少なく、直接に関わらない間接的な経費(患者と家族の宿泊および食事費用と交通費)は、逆に多く支払っていた。医療機関までの距離と入院治療に関わる支払額の間には関連性がなかった。 また、ヨルダンの工業特区で就労するヨルダン人と外国人の労働者の性行動に基づき性感染症のリスクを分析した結果、多国籍の労働者が勤務する労働環境において、外国人と交流が活発な国内労働者における高い性感染症感染リスクを示した。地域のストレスが大きい環境にあって、社会経済条件、文化的な環境の多様化の健康影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アフガニスタンの全国世帯調査に基づく、医療費と医療費関連支出についての研究に大きな進捗があり、研究成果を発表した。アフガニスタン現地の次の調査については現地の研究協力者と連絡をすすめ、研究協力者が主体となって調査実施の準備を行った。ヨルダンにおけるデータ分析、タンザニアのデータ収集、モンゴルにおけるデータ収集と分析を行い、地域ストレスの健康影響に関する調査の準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
アフガニスタン:Kabul市およびKabul県における調査を実施する。対象は10~14歳児とその母親と父親1400組。健康調査項目(PTSD症状、血圧測定、生活習慣病病歴、配偶者間暴力)、紛争に伴う暴力の経験、住居・食糧・水の確保、世帯の経済状況、教育水準、社会的凝集性、帰属意識、社会的連携密度、コーピング。 タンザニア:地域紛争、都市化、難民受入に伴う社会的変化が、健康の社会的格差にもたらしているタンザニアのダルエスサラムにおけるHIV感染と結核罹患と治療継続に関する社会格差に関する調査データに基づきとデータ解析を行う。 モンゴル:ウランバートルにおいて実施した、830世帯の、健康調査、環境調査結果データに基づきデータ解析を行う。 地域のストレスの健康影響、ストレス緩和プログラムの効果について、総合的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アフガニスタンでの調査について、現地の治安情勢の影響により、計画準備までとし、調査実施を2016年に延期することとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の残余の基金と平成28年度の基金、補助金は、平成28年度に実施する、アフガニスタンの調査実施、タンザニアのデータ解析、モンゴルのデータ解析、研究総括に関わる経費として使用する。
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