研究課題
ナノサイズ(100ナノメートル以下)に物質のサイズを制御することが可能となり、100ナノメートル以下になると、一粒子あたりの表面積が格段に大きくなり、従来の微粒子よりも表面活性が高くなるため、新たな物質・材料としてその応用性が期待されている。反面、新たな物性を持つため、従来の測定法では定量が困難であり、有害性の定量評価が出来ず、ヒトに対する未知の有害性リスクを有する可能性が懸念されている。本研究では、中国にあるナノ素材取扱工場やナノ素材製造工場の労働現場を調査し、ナノ素材によるヒト心血管系への影響と労働環境中のナノ粒子との関連を検討し、ナノ素材のリスク評価のための科学的基礎資料を作成することを目的とする。本年度は、これまでに実施した中国の広州市にある炭酸カルシウム粒子取扱工場での調査結果を解析した。個人サンプリングと場所でのサンプリングに加え、リアルタイムに粒子をモニタリングし、工場内の炭酸カルシウム粒子の粒子分布と粒子数を計算した。28人の粒子曝露労働者と28人の非曝露労働者を比較したところ、肺機能低下率は有意に高く(P=0.037)、肺機能検査におけるvital capacity (VC), forced vital capacity (FVC), forced expiratory volume in one second (FEV1), FEV1/FVCは炭酸カルシウム粒子の重量濃度と負の相関があった。また、炭酸カルシウム粒子の累積重量濃度と肺機能低下率との間に関連が認められた。さらに、広州市にある硫酸バリウム粒子取扱工場での調査結果をまとめ、労働環境中の粒子曝露量と、労働者の心肺機能への影響を検討している。
2: おおむね順調に進展している
以前実施した中国の広州市の炭酸カルシウム粒子取扱工場での調査結果をまとめ、工場内の炭酸カルシウム粒子の累積重量濃度と工場労働者の肺機能低下率との間に関連があることを明らかにし、学術論文として報告した。また、これまでに実施した中国の広州市にある硫酸バリウム粒子取扱工場での調査結果をまとめ、労働環境中のナノ粒子曝露量と、労働者の心肺機能への影響を解析している。
広州市の硫酸バリウム粒子取扱工場での現場調査の際に捕集した粒子に関し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより、工場内の環境中に存在する粒子の一次粒径や組成を分析する。また、地区の疾病対策予防センター(CDC)の協力を得て、労働者の健康診断を実施し、これまでに実施した労働環境中の粒子曝露評価と、労働者への粒子曝露による影響を解析し、論文として報告する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Nanotoxicology
巻: 12 ページ: 571-585
10.1080/17435390.2018.1465606.