研究課題
ナノサイズ(100ナノメートル以下)に物質のサイズを制御することが可能となり、100ナノメートル以下になると、一粒子あたりの表面積が格段に大きくなり、従来の微粒子よりも表面活性が高くなるため、新たな物質・材料としてその応用性が期待されている。反面、新たな物性を持つため、従来の測定法では定量が困難であり、有害性の定量評価が出来ず、ヒトに対する未知の有害性リスクを有する可能性が懸念されている。本研究では、中国にあるナノ素材取扱工場やナノ素材製造工場の労働現場を調査し、ナノ素材によるヒト心血管系への影響と労働環境中のナノ粒子との関連を検討し、ナノ素材のリスク評価のための科学的基礎資料を作成することを目的とする。本年度は、これまでに実施した中国の広州市にある硫酸バリウム粒子取扱工場での調査結果を解析した。個人サンプリング (PCIS)は、破砕区域、梱包区域、保守室、倉庫および在庫場所に働く労働者で実施した。また、粒子の数濃度は、光散乱式粒子計数器 (OPC)、凝縮粒子計数器 (CPC)、ならびに走査型移動度粒子サイズ分析計 (SMPS)を用いて測定した。PCISの結果は、粒子の質量濃度は破砕区域で0.4から1.9 mg/m3、梱包区域で78から98 mg/m3、保守室で0.03 mg/m3、倉庫で0.004 mg/m3、在庫場所で0.99 mg/m3であり、工場外では、0.05 mg/m3であった。梱包区域では、破砕区域より、凝集した大きなサイズの粒子が観察された。ばく露レベルは、硫酸バリウムを取り扱う工場で梱包工程に従事する労働者において最も高いと予想された。最近の動物実験で、50 mg/m3レベルの硫酸バリウムナノ粒子の90日間の投与により、肺の炎症が引き起こされることが報告され、梱包区域の硫酸バリウム粒子の質量濃度は50 mg/m3以上であったため、硫酸バリウム粒子工場で働く労働者の健康影響に焦点を当てた更なる研究が必要であることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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